その出会いは背後から
パチパチパチ……
焚き火へ滴った肉汁が弾ける。
先程倒した大蛇は今は切り身となり焚き火の上で香ばしい匂いを漂わせている。
さて、そろそろかな。
俺は近くにある串を取る。焚き火の周りに串を通した蛇肉を突き刺し炙るとゆう粗雑な物だ。
しかし、空腹と冷えた体の前ではご馳走だ。
牙に毒腺は繋がっていなかった為毒は無いはず。あったとしても食う他無いのだ。
ガブッ…1口目から大口で頬張る。
「………美味い!」
1人で感想をこぼす。直火で炙る。これだけだが蛇の肉の旨みが思ったより強いので味が薄い等は一切感じない。ワイルドな噛みごたえがさらに食欲を刺激する。
2本目…3本目…肉汁で口周りがベタベタになっても汚くがっつく。どうせ見ている人はいない。
……と、思った矢先。4本目を口元まで近づけた時、また背後からこちらを狙う気配が……。
次も食べれる奴が良いな。なんて事を考えながら後ろを振り向く…するとこちらを見据えて居たのは……
口元はヨダレがキラキラと輝いている。目は赤い宝石の様でその双眼は真っ直ぐに俺を捉えている。
否、その目が狙っていたのは俺の手元…串焼きだ!
ぐぅぅぅぅううう、
「………あぅぅ」 ジュルリ
そう。食べれる奴とか言ったが後ろに居たのは美しいヨダレ少女だった。
顔は美しさの中にも幼さが残る可愛らしい物だ。髪はシルクの様な銀髪が腰まで伸びている。女性的な凹凸に富んだ体を黒いワンピースと外套、細く可憐な足をこれまた黒いニーソと靴で隠しており肌の白さと黒のコントラストに思わず目を奪われてしまう。
「あ、あのぉ…」 少女が口を開く
「私の事を…す、少しなら…」 少しなら?
「た、食べても良いので私にも食べさせて下さい!!」
そういうや否やダッシュで俺の目の前まで迫って来る少女。
トタトタトタトタ 「アッ」……トタトタトタ
途中でつまずきかけ転びそうになったものの無事串焼きに辿り着く少女。
「いや、食べるってそ「あむっ!」……おーい。」
可憐な少女が男性に向かって食べても良いなんて危ない言葉をうんたらかんたら……っと説教するつもりが俺が手に持ったまま少女は串焼を頬張る。
「美味しいか?」
こくこく
頬いっぱいに溜め込み、串焼から顔を離した少女は首を縦に振ることでYESの意思表示をしてくれた。
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「ご馳走様でしたっ!!」
結局少女は残りの5本の串を全て平らげた。見かけによらず食べる子だ。
「君はアストテアラの子だよね?」
非常に美しいが外見は人種だ。ここに居ることを考えてもアストテアラに居たのは間違いない。
「は、はい!突然凄い地震が来て、気付いたらここに居ました!」
やはりそうか、だが俺がいた街にこんな子が居るなんて一切聞いてなかった。地下の空間も広大な所を考えるとかなりの規模……それこそ国の全土が陥没しているかも知れない。
「あ、そうだ。俺の名前はケイド・ディアスだ。一応聞くが俺と一緒に動くか?何か目的が有るなら別だが。」
「私はエレナ・アリシスタです!取り敢えず外に出たいのですがもし宜しけれはご一緒させてください!」
ペコり。深々とお辞儀をするエレナ。
「外か、俺もそのつもりだからな。これからよろしく。」
右手を差し出す。エレナが同じく右手を差し出し握る。冷たく小さく綺麗な手だ。俺の殺しを重ねた手とは違う、可憐な少女の手だ。
「さてと、」 外に行く。一言で終わる目標だ。だがその為には重要な情報が全て足りない。
「ここは何処だ?何処が外に繋がってるのだろうか?……何か分かる事は無いか?」
もはや方角も分からない。頼りはこの少女のみ。
「申し訳ありません。私も全くわからないです。」 困った表情を浮かべるエレナ。まあ、無理も無いか。こんな少女なら生き延びていただけで花丸だ。
「だよなぁ。……仕方ない、取り敢えずは川に沿って登っていくか。」
取り敢えず川の上流に向かえばここより高い場所に行けるだろう。
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俺とエレナは並んで歩く。川の上流を目指して。
「そういえばケイドさん、あのお肉はどこで手に入れられたのですか?」
「ああ、大蛇に襲われたから。そいつをな。」
「へ、蛇……」 顔が青ざめていくエレナ。そんなに蛇肉がショックだったのか。
「うぅぅ、ゲテモノじゃないですかぁ。」
「蛇に失礼だぞ。それに質問すらなく食い付いてたじゃないか。」
「凄くお腹が空いていたので……」
やはり見た目通りの少女。異質な程の美しさがあっても蛇は苦手な女の子だ。
しばらく進むと広めの空間に出た。この地下世界はどちらかとゆうと洞窟に近い。だが崩落によって家の残骸等が散乱しているにも関わらず上に崩落の跡の様なものが見えない。ヒビから漏れる光もなければ発行性の菌類?の様なものが生えてすらいる。
「ケ、ケイドさん…あの……」
エレナが息を切らしながら俺の名前を呼ぶ。もう2時間程は歩いただろうか?疲れるのも無理は無い。
「少し休憩にしようか。」
俺とエレナは川辺に腰を下ろと火を起こし、川の水を煮沸する用意をする。