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音のない歌詞

葬送の手紙

作者: 渋音符

模試の最中に浮かんだ詩です。

模試の結果は、まだ返ってきていません。



 前略。

 貴方は今どこで何をしてますか。

 今頃、喫煙所でたばこを吸ってますか。

 健康に悪いですよ。煙たがられますよ。


 ………ああ、そうだった。

 もう関係ないんでしたね。


 春は桜を見に行きましたね。

 背が低いしだれ桜の下で、

 シートも敷かずに寝ころがって、

 虫を眺めて。

 花の香りをかいで、青空を見上げたら、

 鳥が一羽、空を悠々と飛んでいました。


 夏は砂浜に行きましたね。

 あいにくと天気は荒れていて、

 うきわを失くして、

 悔しがって。

 仕方なく入った海の家の焼そばは、

 美味しかったですね。


 ………ああ、忘れられないな。


 貸してくれた本、返せなくてごめんなさい。

 貴方の部屋の本棚に戻しておきました。

 一緒に撮った写真、指輪と一緒に、

 貴方のお墓(もと)へ埋めました。


 何度も、何度も、春が巡っても、

 きっときっと、忘れられない。

 幾度も、幾度も、夏が降っても、

 ずっとずっと、忘れたくはない。


 中略。

 貴方は今どんな所にいるんでしょうか。

 ちゃんと、天国とやらには行けましたか。

 お酒も送りました。届いていますか。

 貴方の好きなボトルですよ。届いてますか。

 

 秋は紅葉を見に行きましたね。

 大きい山が色とりどりに染まって、

 紅と黄色の絨毯に、

 はしゃいで飛び込んで。

 一緒に見えた紅葉吹雪が、綺麗でしたね。


 冬は雪があまりつもらなくて。

 私はすねて貴方を困らせてしまいました。

 クリスマスに二人でベンチに座って、

 軟らかい雪を掴んで、

 一緒に笑った日もありましたね。


 ………もう、思い出したくないな。


 私があげた栞、まだ持ってるかな。

 もう一度作って、お気に入りの本にはさんで、

 貴方のお墓(もと)に埋めました。


 何回も、何回も、秋が回っても、

 もっともっと、悲しくなるの。

 一年、また一年と、冬が落ちても、

 もっと、もっと、苦しくなるの。


 ―――………ああ、もう。こびりついてるな。

 あの日の光景。あの人の横顔。

 手紙に移しても、失くならない。

 私も虚しくなって、

 貴方のお墓(そば)(ねむ)りたいな。

 何度も、幾度も、日が進んでも、

 ずっと、ずっと、貴方といたいの。

 何回も、何回も、時を綴っても、

 ずっと、ずっと、想いが痛いの。

 一段と、また一段と、足を進めても、

 まだまだ、まだまだ、貴方に近づけないの。

 一秒、また一秒と、私、落ちていくの。

 きっと、きっと、瞳を開いたら、

 もっと、もっと、貴方の近くに、

 ずっと、ずっと、離れたくはない。



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