王国編Ⅳ
「あい、次ぃ!ちんたらすんなぁ!」
王都の前までやってきた。間近で見ると城壁は結構なデカさだ。城壁はどうでもいいんだよ。うん。
普通は街道で襲われているお貴族様を救ったりする。ないんだな〜コレが。
街道でやったらマークされやすくなるから俺だったら違う場所でやる。
そもそも盗賊なんてやるなら他のことするよな。
結構な人や馬車とすれ違ったが、平和そのものだった。ただすごい驚かれた。ガイのせいだ。ただでさえでかいガイが、それよりもでかいイノシシ担いでんだからな。
「あい次ぃ!証明書は…ってデカ!イビルボアか!マジかよ…すげぇな」
その反応もう飽きた。愛想笑いに疲れてきたところだ。
「あ、証明書無いんで、銅貨30枚で…」
うんコレでだいじょ…
「うーん、身分証明無しの奴隷じゃない獣人か…」
うわめんどくせぇな…。獣人に厳しいって言ってたがここまでひどいとは。
「旦那ぁ、コレでなんとか〜なりやせんかねぇ。」
揉み手で近づき銀貨を数枚握らせる。
「お、おおまぁいいだろう、イビルボアを倒したことだしな!いけ!」
入れないよりかマシだ。面倒ごとになるよりこうして入っちまった方がいい。
「なんで多くお金を払ったんですか?」
不思議そうにハナが聞いてくる。
「人間なりの処世術ってやつだ。」
よくわかってなさそうだが、わからない方がいい。ハナには汚い部分は覚えて欲しくない。
「とりあえずこの猪売ろうぜ。ジロジロ見られんのも嫌だしよぉ。」
当然だが街の人に見られている。
「それもそうだな。あ、あいつに聞いときゃ良かったな。」
過ぎたことだ。一刻も早く入りたかったし、しゃーないな。
「さーせん、コレ売れるとこ知ってます?」
なんかいかにも冒険者っぽいやつに聞いた。
大剣背負ってるしなんか、一狩り行こうぜ!とか言い出しそうだ。強そうだから多分驚かない、と思う。
「ん?何だねきみた…イ、イビルボアだと!これを君達が仕留めたのかね!」
は?
「いや俺一人だ。」
「馬鹿な…イビルボアは中堅パーティでも苦戦する相手だぞ!それを一人だと?高名な冒険者の方か?」
おいおい。
「これからなるところだ。」
マジかよ。
「な、何という…まさしくゴールデンルーキーだ。」
テンプレじゃん。なんでガイがそのポジションなんだよ。たしかにすごいけど!そこは俺だろ!
その、何で驚いてんだコイツ?みたいな顔をやめろ。腹立つから。
「とりあえず売れるところ教えてくれや。」
気怠そうに言うガイ。
「あ!そうでした!ささ、どうぞ!冒険者ギルドで登録も買取も出来ますので!」
尊敬の目だ。
「だってよ。いこうぜ。」
なんなんだよそれ。