王国編Ⅱ
当初は苦難が続くであろうと考えていたが、なかなかどうして順調に街に着きそうだ。
ガイが人が踏み歩いた後から街道まで探し当ててしまうとは…。
しばらく街道を歩くとふっと欲求が湧いてきた。
「タバコ吸いてぇ…。」
なんだろうな、最初の方は必死でこんなこと思ってなかったんだけどな。多分ある程度安全を確保したから思い出してしまったんだろうな。
「タバコってなんですか?」
「うーん、俺の中ではストレスが溢れる人間社会において、豊かな人生を送るには絶対に必要なものだ。」
「そうなんですか!じゃあ一刻も早く確保しなければいけませんね!」
なんだろう、騙した気分になるな。
俺の中では無いと生きていけないが、生命活動を維持するには不要なものだからな。なんなら阻害するくらいだ。
嫌いな人も多いしな。
「ああ、そうなんだよ…ハハ。」
もうこの際タバコじゃなくてもいいから飴とか、ガムが欲しい。
「俺はうまい飯といい女が欲しいぜ。」
なんて野生的なんだろう。本能に忠実だ。
だが正論でもある。俺もうまい飯食べたいし、いい女が抱きたい。男はいつだってバカだし、本能に忠実なのだ。
「あぁ、とりあえず街に着かなきゃな。」
真顔で答えた。
「もう、男の人ってコレだから。」
すまない、バカは治らんのだよ。
あ、反対側から人がきたな。なんか馬に引かせてる。荷台かな?空だから多分売ってきたんだろ。お、街は近そうだな。
「おい、兄ちゃん景気はどうだい?」
ガイが臆せず話しかける。
「うん?見たところ冒険者二人にに別嬪の奥さんか?どっちのなんだ?やっぱりマッチョなあんたか?あ、話が逸れたな。景気は悪くないねぇ!やはり王都で買ってもらった方が、物を運ぶリスクを考えても得だね。」
ガイはニヤけてるし、ハナは奥さんって言われたところあたりから照れている。
「質問なんだが、この街は入るのにどれくらいお金がかかるんだ?」
多分金かかるだろ。中学で引きこもった時、異世界転生ものは結構読んだ。とすると身分証明が無ければ…
「身分証明がなければ銅貨10枚だな。なんだ?冒険者じゃ無いのか?」
やっぱりな。
「いや、これからなりに行くんだよ。」
適当に言い訳しといた。
「まぁ獣人さんが暮らすにはキツイだろうが頑張れよ。実力があれば誰だって関係ない。それが冒険者ってもんだ!」
「おうよ!任せとけ!」
親指を立ててキメ顔している場合じゃ無い。
どうしよ、俺ら金持ってないよ。