王国編Ⅷ
「なんだよ、興醒めだな。なら俺も拳で勝負と行くか。」
ラッキー、なのか?いや違うな。あの自身に満ち溢れた顔、体術も含めて奴の強さだろうな。
刹那、奴が一気に距離を詰めていた。速過ぎる。今まで見てきた中で断トツだ。とっさに腕を割り込ませたが、遅かった。
「カハッ!」
意識が遠のく。勝てるわけがない。同じ人間なのか?
重い、重すぎる。拳一つでこの威力か。嫌になるぜ畜生。
「レオ!」
「ハナ逃げろ!早く!ガイのもとまで!」
クソ、時間を稼ぐか。いやー無理だな。
「おいおい、人の心配してる場合かよ。」
クソ、俺はもっと強いはずだろ。
「オラ、こっちだよ!」
こんなはずじゃ、
「お前、身体強化魔法使ってないだろ?」
なんだよそれ、
「身体強化魔法抜きでこいつらに勝てたのは褒めてやる。だが、こいつらの身体強化魔法なんて毛が生えたほどの強化でしかねぇ。本物の身体強化魔法ってのはよぉ!人間の限界を優に超えられるんだぜ!」
違和感の正体はそれか。予想以上に速いわけだ。
繰り出される拳に成す術もなく滅多打ちにされる。
「レオー!」
なんで逃げないんだよ、今度は俺に守らせてくれや。
ああ、意識が、また守れないのか俺は。
「『はあ、なんでこんなに弱いんだろ。』」
「なんでこいつ剣を抜かなかったんだ?」
戦い方にも違和感があった。自分の身体なのにうまく使いこなせていないといえばいいのだろうか。まあ知ったこっちゃねぇな。早くあの女と金を手に入れたい。どうせ獣人だ。こいつさえやっちまえば後はどうにでもなる。
いや、人質にしたほうがいいか。あのガイってやつは歯が立ちそうにねぇ。
めんどくせぇな、やっちまうか。ゴチャゴチャ考えるのは性に合わない。
この街には後ろ盾も多い。お偉いさんに言えば冒険者の一人や二人消せるだろ。
「じゃあな、次生まれ変わるならもっと強くなるんだな。」
レオにとどめが刺される。これ以上はダメか。あのクソガキまだ出てこないつもりか。
仕方がないか、私がレオを守るしかない。
「そうはさせま『それはちょっと困るんだよねー』」
レオが起き上がり、子供のような無邪気な声を出した。
ようやく出てきたか。
「遅すぎるんじゃないの?本当に見殺しにするかと思ったわ。」
おかげでこの醜い姿を見せてしまった。
『ハナさんこそなんで早く助けてくれなかったのさー!こうやって出てくるのにも結構力使うんだぞ!』
このクソガキめ。
「この姿をレオに見せられるわけないでしょう。」
今は、黒い牛の姿になっている。ミノタウロスといえばわかりやすいだろうか?筋骨隆々でとても乙女にはみえない。だから嫌なのだ。
『僕はそっちのほう好きだぜ?』
虫唾が走る。
「あなたに好かれたって何の意味もないわ。それより、早くそのゴミクズどもを処理してしまいなさい。」
さっきの男たちはみな腰を抜かしている。
最初の2人はどうでもいい。だがこいつは殺す。
愛しのレオを傷つけたこいつを許さない。
『おーこわ、ということだから君たちバイバイ。』
何気なく振った刀が、いとも容易く二人の首を落とす。
最初から出てきていればレオを傷つけることはなかったのに。
こいつもひねりつぶしたい。だがこいつに手を上げることはレオに手を上げることと同義だ。
なぜならこいつもレオなのだから。
それに、こいつには絶対に勝てない。だからレオを傷つけたこのゴミから殺す。
「ひぃ、ば、化け物!」
大男よりはるかに大きくなった手で胴体をつかむ。
「あら、女の子に対して失礼ではなくて?」
ギリギリと万力の如く徐々に力を込めていく。
「あ、謝るから!お願いだっ!助け、」
無様な命乞いをしようとしたので、一気に握り潰す。
パン!と小気味いい音を立て大男は爆ぜ、肉塊と化した。
「”次生まれ変わるならもっと強くなるんだな”だったかしら?」
『ヒュー!ハナさんワイルドー!』
お前もいつかこうしてあげるわ。
主要人物の隠れた部分が出てきました。
お気づきと思いますが、途中から大男、ハナの順で視点が変わっております。
次回はレオが戦っていた間のガイ視点、もしくは幕間を書きたいと思います。




