王国編Ⅶ
「とりあえず宿は取れましたね。」
雀亭という宿にしばらくいることにした。ギルドに勧められたうちの一つだ。ちゃんと3部屋取れた。ハナが二人部屋に泊まろうと言い出したが、部屋が空いていなかった。いやね、期待していないわけじゃないけどさ。もっと段階があると思うんだよ。
空いていなかったのは幸か不幸か、どっちだろうな。
「外に出てみねぇか?」
確かに異世界来たなら観光したいよな。まだ実感がなくてヨーロッパに旅行に来たみたいだ。いったことないけど。
「行こうぜ!たばこ買いに行きたいし。」
宿屋につくまでに何人かたばこを吸っている人がいた。間違いなく庶民にもたばこは流通している。
「レオもこう言っているし決まりだな。」
たばこ代もいつか返すからな。
「もう、しょうがないですね。たばこはレオに必要なものですからね。」
そうだ。体がニコチンを欲しがっているのだ。
宿を出た。予想通りあいつらがついてきているな。ギルドから出てきた時からついてきていた。暴走族をやっていたときは何回もつけられたからな。わかるんだよ。
誘いだしてみるか。どうやら2人のようだしな。
俺たちは小さな路地の中に入っていく。ガイもいるし何とかなるだろ。あれ、ガイがいないんだけど。
「ガイはどこに行った?」
その答えは追手の2人から伝えられた。
「ああ、あの兄ちゃんは強そうだから別れてもらったぜ。」
「奴さん女好きだろ。だから声かけてもらう段取りをしていたんだが、どうやらうまくいったようだな。」
これだから脳筋キャラは。こいつらレベルなら何とかなるか。ガイみたいな威圧感はない。
「さっきのイビルボアの金を出しな。そしたら痛い目見なくて済むぜ。そっちの女は逆に気持ちよくなっちまうかもな。」
そういって男2人は懐からナイフを取り出した。
「ど、どうしましょう。レオ!助けてください!」
なんでそんなにワクワクしているんですかハナさん。
「あいにく金はあいつが持っているんでね。」
嘘だ。金貨のほとんどをハナが持っている。
「それじゃあ、本当かどうか確かめさせてもらう、ぜ!」
そういいながら1人がナイフを振ってきた。
難なく躱した。こちとら喧嘩では負けなしだ。腐っても金獅子なんだよ。
「な!」
「おらよ!」
2撃目はうまくいなし、ナイフを奪った。そのまま拳を叩き込む。
「キャー!かっこいいです!」
いやいやどうも。ハナに手を振る。これくらい余裕がある。
でも予想以上に動きが早かったな。もう少し弱いと思ったんだが。
殴った時も意識を奪ったと思ったが、すぐに立ち上がった。
「クソ!兄貴はまだか!」
兄貴って誰だ?
「今呼んできたぜ!」
まずいな、ちょっと強そうだ。勝てるかわかんねぇな。
「おうおう、随分子分たちをいじめてくれたじゃないか。」
剣を担いだ大男がふてぶてしく笑いながら話す。
流石に長剣はリーチが違いすぎる。
「ほら、早く剣を抜けよ。それくらい待っててやる。」
いや、抜ければいいんですけどね。
「お前なんて拳で十分だぜ。ハハッ!」
いやマジで大ピンチなんですけど。