王国編Ⅵ
「買取金額はこちらになります。ご確認ください。」
ガイが紙を確認するとぶっきらぼうに返した。
「ああ、いいぞそれで。」
適当だな。査定はいくらだったのだろうか。
「いくらだったんですか?」
ハナが先に聞いてくれた。
「いやなんて書いてあったかわからねぇ」
そういや俺もガイも文字がわからなかった。言葉は通じるのにな。
「ちょっと、わからないのに了承したんですか!?」
でも話も聞かずに了承するのはあるあるだよな。俺の立場でも多分やった。
「文字が書けないのに文字が読めると思うか?」
当たり前のことを言われてハナは顔を赤くした。
「だ、だったら私に聞けばいいじゃないですか!」
ぶつぶつ言いながら紙をギルド職員から奪い取った。
これには職員さんも苦笑いだ。申し訳ないので会釈だけしといた。ガイはいつの間にか女に話しかけに行っていた。
「え~と、全額で金貨25枚と銀貨50枚ですね。ガイ!ちょっと!油売ってないで早く来なさい。」
ハナさんがお冠だ。ガイも後ろ髪引かれながら戻ってきた。あ、酒瓶持ってる。ずるいぞ俺も買おう。
カウンターにやってきた。アルコールのにおいに少しワクワクしてきたな。
「ビールください!」
「あいつお前さんの連れだろ?合わせて銅貨10枚だ。」
そういやこれ俺の金じゃなかったわ。まあいつか返すわ、いつか。
そうして出てきた酒瓶はさっきガイが持っていたものと全く同じだった。多分ビール頼んだんだな。
肝心の味のほうはどうだろう。一気にあおり、ゴクリと喉を鳴らす。
うん、悪くないな。大味だが口の中にガツンとビールの味が広がる。飲みごたえがありそうだ。なによりキンキンに冷えているのがいい。やっぱりビールはよく冷えたものに限る。
ふと思ったのだがビール2杯で銅貨10枚ということは日本円で換算すると1枚100円くらいになるのか。
だとすれば王都に入るだけで3000円というのはちと高い気がするな。いや待てよ、身元不明なやつをいれるのだから、財力を信用の目安としているのかもしれないな。それに治安維持に金を回すことだってできる。もちろん麦の生産が飽和していて、ビールが安いだけなのかもしれないが可能性は低そうだ。
「レオも何やってるんですか。早く行きますよ、今日の宿をとらなきゃないんですから。」
「お、悪い悪い。」
ギルドから出ると空は茜色に染まっていた。
「きれいですね。」
「ああ。」
夕焼け空に見とれるハナの横顔。その顔に見とれてしまいそうだった。
「よっしゃ行こうぜ!」
最後の最後までギルド職員や、女冒険者に見送られていたガイが遅れて出てきた。
「お、おう」
ちょっと恥ずかしいな。クソ、ガイの奴ニヤニヤしてんじゃねぇ。
「さ、行きましょう!早く!」
ハナが俺の手を取り、楽し気に駆け出した。
「あ、おい。ちょまてよ!」
しまらねぇなぁ。だがこの緩さが心地いいな。
いつのまにか日を跨いでいました。できるだけ毎日投稿できるように頑張りたいと思います。土日なら複数話投稿できるかもしれません。
そしてブックマークありがとうございます。執筆の糧となっております。これからも精進いたしますので、応援のほどよろしくお願いいたします。