白木蓮
さようなら、あなた。
春まだ浅い四月白昼。
旅先の道すがら白木蓮の木を見かけた。
まるで、白い鳥が宿っているかのように、ふっくらとした花弁が開いて重そうな。
早春の日射しに照らされて、咲き誇る白木蓮に見とれていた。
と、さっと一陣の風が吹いた。
「あ。」
バタバタと音を立てて、真っ白な一羽の鳥が薄青い空へ飛び立った。
それは、儚い夢のように。
薄青い空の彼方へと吸い込まれるように、消えていった。
かつて、二人で来た旅路を一人で辿る。
白い鳥の消え去った空に手をかざす。
透明な青空が、チカリと白く光った。
今、ここに、あなたはいない。
旅先で見た風景にインスパイアされて書いたショートショートです。
ご一読ありがとうございました。
作者 石田 幸