さぁ、どっちでしょう。
「あー、疲れた。」
ゲームの周回をやり遂げた時の達成感には、究極の安堵が付いてくる。
もちろん、大きな疲れも付き物である。
世の中のスポーツ選手や学者など、もっと偉大なことをして疲労し達成感を感じる人もいるのだろうが平凡な自分にはこれがお似合いだと思う。
深夜アニメを見ながら周回作業をやる習慣がつき、自分は完全に夜型の人間となってしまった。
夕飯を食べてから深夜にかけてというのは意外と長いもので、小腹が空く。
不健康極まりないことこの上なしなのは重々承知している上で、俺は小銭を持ってコンビニに向かう。
コンビニまでの道は遠い、だが俺はコンビニまでの道がさほど嫌いではなかった。
だれの姿も見えない道を一人で歩くのがなんとなく好きだった。
本来なら暗いであろう道を街灯が明るく照らしているのがなんだか好きだった。
降る雪の冷たさも感じないぐらい、この道を美しいと思った。
深夜にコンビニに向かうたびにこう思う。
ただ、なぜだろうか?
いつになくこんなにも美しく感じるのは………
コンビニに着いた。
入店しても「いらっしゃいませ。」の声はない。
客が来るまで裏で仕事をしているのだろう。
他の客も見当たらず、なんだか自分の為に仕事をしてくれているような気がして、少し申し訳ない気持ちもある。
カフェオレと菓子パンを購入し、店を出た。
「帰ったら少し漫画でも読むかな。」
そんなことを考えながら家に向かう。
自分はアニメや漫画が大好きだ。
それはもう、自他共に認めるほどに。
魔法や異能力に異世界転生、どんなものでも好きで、かつて本当に魔法が使えるのではないかとよく真似をしたものである。
そんな昔もあったが、中二病やオタクなどの言葉を耳にするようになってからというもの、そんなことはするよしもなかった。
それでも、何か自分にも不思議な事が起こるのではないか。
そう思ってる自分がいる。
そう願っている自分がいる。
コンビニを出てから、かなりの時間が経つ。
「おかしいな。こんなに時間のかかる道じゃないはずなのに。」
ぼーっとしていて道を間違えたか、それとも元々こんな道のりだったのか。何も恐怖することはない、することではない。なのに、足の震えが止まらない、動かない。完全にその場を動けなくなってしまった。
その時…
ゴツンッ
鈍い音がした。
何の音か理解できなかった。
自分が倒れていくのが分かる。
バタンっと大きな音を立てて倒れた。辺り一面の雪が赤く染まっていく。
(あぁ、俺は殴られたのか。)
声も出なかった。どうやら、頭を強打されたらしい。
自分にも何か起こって欲しい。自分にも何か特別なことが。これがその末路なのだろうか。
神様と聞くと、崇めたくなるような気持ちになる。だが、神は果たして善人なのだろうか。人の上に立つものが善とは限らない。過去の暴君や政治家を見ればそれが明らかだ。上に立つものが善とは限らない。力を持つなら尚更、悪に染まることもある。
もしこの世界に神様がいるのなら…
果たしてそれは善人なのだろうか?
遠のく景色の中で一人の少女を見た。自分の近くに立っている。
(なんで、こんな夜中に女の子が?)
(あれ?そういえば家を出てから、誰にも出会っていない気が・・・)
(僕は、コンビニで店員に会ったのだろうか?)
色々な疑問が脳裏によぎる。
これ以上、何も考えられない。そう思った矢先、俺は完全に意識がなくなった。
そして、夢を見た。夢を、夢であってほしい夢を。
そして、この世界は…
消滅した。