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5話:一人目・電脳世界の女神

 朝食で使った皿を流しに運び、台布巾で軽くテーブルを拭く。そしていつものように洗い物を始めるが、一人分多いだけで妙に新鮮な気分になる。


 思えば誰かに食事を作るなど、とても久しぶりの事だった。

 昔は両親や春川に作る事があったが両親は四年前に亡くなり、春川は最近忙しくてそもそも会っていない。大学には家に招いたりする程の仲の友人もおらず、一応仲の良い後輩がいるが食事に関して無頓着なタイプなので作ったりはしない。必然的に料理を作るのは自分のためだけになる。



 そう考えると、俺はどうにも石田に気を許し過ぎている気がする。


 身寄りどころか行く当てもないない女子高生に寝床や食事を提供するのは人として当然と言えるかもしれないが、俺はここまで他人と仲良くなれるタイプの人間ではなかった筈だ。実際今までに出来た友人と言えるような存在は片手で収まる程しかいない。



 石田が俺や世界にとって異質な存在だという事を差し引いても、どうにも違和感を覚える。春川に似ているからだろうか。





 そういった事を考えていると、玄関の呼び鈴が鳴らされた。来客の対応のために洗い物を途中で止めて玄関の方に向かう。



「秋山ぁ! 早く出てこねぇか!!」


 廊下に出たあたりで、玄関の方から怒鳴り声が玄関から響いてくる。

 いくらなんでもせっかち過ぎるだろう。それと朝から近所迷惑になる行為はやめて欲しいものだ。



「こ、考輝さん! 玄関にやのつきそう二人組が!」


 こんどは石田がバタバタと階段を駆け下りて目の前に転がり込んできた。これまた煩い。

 どうやらベランダから来客者の姿を見たようで怯えた目をしている。



「問題ない、大学の後輩だ。例の話にも関係ある事だから、とりあえずリビングで待っていろ」


「こ、後輩?」


「今外に出ている連中は護衛だ。ま、後輩の父親がそっちの道の人な訳だ」


 それだけ言って俺は玄関に向かう。石田は混乱しながらもリビングに入るが、心配なのか頭を少し出してこちらの様子を伺っている。



 背中に石田の視線を感じながら玄関を開けると、黒い値が張りそうなスーツを着た二人のゴツイ男達がいた。そして彼らの後ろにはこれまた黒い高級そうな車が停まっている。



「秋山ぁ、若を朝っぱらから呼び出しといて出てくんのが遅ぇんじゃねぇか? 若も暇じゃねぇんだぞ?」


「佐々木、朝だと分かっているなら大声をだすな。近所に迷惑だ」


 若い男――佐々木がこちらにガンを飛ばしながら顔近づけてくるが、もう一人の妙齢男に止められる。なお先ほど怒鳴り声をだしたのもこの佐々木だ。

 そんな男の対応に、佐々木は不満げに口を開く。



「でもよ、兵藤さん――」


「こいつは、まだ、堅気だ。迷惑かけるんじゃねぇよ」


 妙齢の男――兵藤は『まだ』の部分を強調してそう言うとこちらに視線を向ける。その眼光には有無を言わせない鋭さがあった。



「別に俺はお前らの仲間になるつもりはないのだが」


「今はそう言っていればいいさ。だが若がお前を気に入っている以上、そう簡単に進むとは思わない事だ」


 俺の反論にも兵藤は変わる事なくこちらに鋭い眼光をぶつけてくる。ただ兵藤とのこのやり取りは何度も繰り返している事なので、特に恐れたりはしない。





 そんないつものやり取りをしていると、後ろ車のドアが開く。そして中から背の低い男が出てきた。


 身長は一五五センチくらいで、白みがかったクセのあるショートヘアー。更に色白で手足も細く童顔。服装は兵藤達のように黒いスーツを着ているが、着こなしているというよりもスーツに着られている印象だ。正直な話、俺の一つ下の十九歳には到底見えない。そもそも男どころか女に間違えられてもおかしくない外見だ。



「よう、立花。朝から呼び出して悪い」


「……」


 声をかけても男――立花佳行は特に反応を返さない。ただこちらをじっと見ている。

 別に怒っているわけではなく、これがこいつの通常運転だ。




一方の佐々木は慌てたような声をだして、急いで立花の方に駆け寄る。


「若! まだ出てきてはダメですよ! こいつがまだ何か危険なものを隠して――」


 佐々木が駆け寄る前に立花はこちらに走り始め、兵藤も通りこして俺の背中に隠れる。そして無言で少々怯えた顔をしながら俺の背中から佐々木の方を見る。

 そんな姿を見て佐々木は血管がはち切れそうなほどに顔を赤くする。そんなに血を一か所に集めて大丈夫なのか不安になる程だ。



 一方の兵藤は軽くため息をつくと、車の方に踵を返した。



「……それでは私たちは車にいますので、なにかあったらお呼びください。いくぞ、佐々木。いつまでも茹蛸みてぇな顔しているな」


 いまだこちらを睨みつける佐々木を引っ張りながら、兵藤は車の中に入って行った。

 その様子を見ながら立花は兵藤達に小さく手をふる。そして二人が車に乗ってドアを閉めると、すばやく玄関のドアを閉める。閉め終えると安心したように息を吐いた。



 それから立花は腕につけていた時計のようなものを触ると、光が放出されディスプレイとキーボードが空中に表示された。

 見た目は四角い小さな画面を時計のように腕につけており、画面から光が放出され、その光が空中にディスプレイを作っている。


 そしてキーボードをカチカチという電子音と共に操作すると、ディスプレイに立花を模した二等身のキャラクターが現れる。服装もスーツで立花と同じだが、このキャラクターは立花よりも女らしく見える。




『お待たせしました、考輝さん! 頼れる貴方の電子の後輩、ユッキー参上しました!』


 ディスプレイ上に現れたユッキーと名乗るキャラクターは良い笑顔を見せながら大げさに動き、最後には満面の笑みでダブルピースをした。ユッキーを動かしている立花は眉一つ動かしていないが。



『どうですか、この最新の機械! イノベートソリッドって名前なんですけどこれならタブレット持ち歩く必要もないので便利です』


 ユッキーがディスプレイの中で縦横無人に踊り、服装がメイド服や水着に変わり、背景も草原や雪山など、様々なものに変化する。全身どころか全能力使って喜びを表現していた。


 立花は基本的に面と向かって人と話したりは出来ないが、メールやチャットのようなネット上でのやり取りは出来る。それどころか普段の彼からは想像できない程高いテンションを見せる。そこで実際に人と話す時もそういった事が出来ないか試した結果、自身でモデルと音声を作り上げ、今のようにディスプレイを挟んでコミュニケーションをとれるようになった。


 今はこのイノベートソリッドというものを使っているが、前まではタブレットで同じ事をしていた。


 結果的により話さないようになったようだが、立花自身はこのシステムを気に入っているらしい。むしろ現実にいる『立花 佳行』ではなくディスプレイの中にいる『ユッキー』の方が本体のように振る舞っているくらいだ。



「朝からわざわざ悪いな。こっちからお前の所に行くべきなのだが、あまり石田を連れて外に出るのは少々リスクが高すぎた」


『そうですねぇ……基本は大丈夫でしょうが、万が一身元を確認された時に戸籍がないとか、ちょっと面倒な事になりそうですからね』


 立花には、石田の事も含めて昨日から起こった事を全て話している。

 こいつは基本的に他人を怖がっているので誰かに漏らす心配はない。また立花の力はこの先確実に必要になるものだ。



『しかしご安心を。私なら戸籍を偽装して作るくらい造作もありませんから!』


 ユッキーがドヤ顔を作ると、彼女の背景にも『ドヤッ!』という文字が浮かぶ。一方の立花の顔はピクリとも動かない。一体どのように感情のコントロールを行えばこのような芸当ができるのか謎だ。



 なお、立花はネット関係がおそろしく強い。

 好きこそものの上手なれ、とは言うものもこいつは度が過ぎている。生活の殆どを電子機器と共に過ごし、散歩でもするような軽い気分で政府のコンピューターをハッキングして荒らし回る。間違いなく世界最高レベルのハッカーだ。






「秋山さん……そちらの方は?」


 気が付くと石田が傍まで寄って来ていた。兵藤達が見えなくなったので近づいて来たのだろう。



「朝俺が電話で話していた相手だ。名前は立花佳行。こう見えても男だ。それからーー」


『私は電子に生きるパーフェクトな女神、ユッキーと言います! 後ろの暗い奴は無視して構いませんので』


 立花の紹介をしていると電子音が割り込んできた。ユッキーではなく立花として紹介したのが気に食わなかったのかもしれない。


『それで、もしやあなたが石田さんですか? 簡単なお話は考輝さんから聞いて――』



 しかし、今度は立花の方が遮られた。





「うっひゃー! ユッキーの本体だ! リアル男の娘とかマジパナイ!」


 石田が奇声を挙げながら立花に抱き着いたからだ。


「!? !?」


 流石にこの状態でディスプレイを触る事は出来ないので、立花はただただ困惑した顔をしている。手足をバタバタさせて抵抗するが石田の方が力強いようであまり抵抗になっていない。



「すごーい! かる―い! 年上の男の人とは思えーーイダイイダイイダイ!!」


 ひとまずアイアンクローで石田を落ち着かせた。










「――つまり立花、もといユッキーも漫画の中に出ていたため知っていたと」


「はい……ユッキーさんは秋山さんの四人いた直属の部下の一人でサイバーテロや情報工作を担当していました……」


 思わず生の男の娘を見てテンションが上がり暴走してしまった私は考輝さんのアイアンクローで鎮静化された後、廊下で正座させられながら洗いざらい吐かされていた。


 しかしここでユッキーこと立花佳行と出会えるとは思っていなかったのでテンションが上がってしまったのだ。特に立花さんは漫画の中では姿を見せる事を嫌い、一回も姿が描かれる事はなかったので、生で本人を見る事ができて感動してしまったのだ。


 リアル男の娘とか尊い。グヘヘ。



「……反省しているのか、お前? 何だか顔がニヤけているぞ」


「いえ! 誠心誠意反省しております!」


 顔に邪心が出ていたらしく、考輝さんに睨まれた。自重せねば。



『それにしても私までが漫画に出ていて考輝さんと一緒にテロっているとはびっくりですね。他には考輝さんの仲間にはどんな人がいたんですか? 知り合いとかいるかもしれませんね』


 ユッキーが軽い口調で質問してくるが、立花さんの方はさりげなく距離をとって、私の方を見ようともしない。流石に初対面であんな事をすれば嫌われるのも当然かもしれない。本当に自重せねば。

 原作キャラに会うたびに変なテンションになって嫌われるのは避けたい。


 心を落ち着かせ、ユッキーの質問に答える。



「えっと……秋山さんの直属の部下は後三人いて、三度の飯よりも人を切る事が大好きな殺人鬼の佐藤、ヤンデレ型暗殺マシーンのアリス、自殺好きな新興宗教の教祖の水無瀬ですね。心当たりある人いますか?」


「そんな頭おかしい人物の心当たりなんてあってたまるか」


 考輝さんは即答だった。呆れた目でこちらを見るが、すぐに目を閉じるとこめかみをおさえた。ユッキーも乾いた笑みを浮かべている。



「あの……どうしましたか?」


「そんな連中がこの世界にいるなんて思うと頭が痛くなってきた……。とりあえず場所を変えよう。立花も来た事だし漫画の内容の話を聞かせてくれるか」


 考輝さんはため息をつきながらも、リビングの方に足を向ける。


『ぶう……いい加減ユッキーって呼んでくださいよ』


 そんな考輝さんをユッキーは不満げな目で見ていた。








 上の部屋から昨日まとめたノートを取ってきた後、私はリビングで漫画の内容の説明を始めた。テーブルの向かい側に考輝さんと立花さん(ユッキー)が座り、真剣な目で私を見ている。


「漫画の概要としては、主人公は政府直属の捜査組織――特殊犯罪対策部隊、通称特犯の一員で日々ギアホルダーの犯罪者と戦う異能力バトル漫画です。

 特犯のメンバーはまず主人公の二階堂大和。正義感あふれる青年で、昔秋山さんの部下に幼馴染を殺されたため悪を憎み、感情的になってしまう事が多いですが、どんな強大な相手でも引かない姿はカッコいいですね。次にヒロインの望月ミツバ。大和君に好意をよせる女性ですけど、大和君がよくある感じの鈍感でなかなか好意に気づかないです。もどかしい感じです。性格は冷静なんですけど、恋愛に対して奥手ですぐ赤面する姿が可愛いいんですよ、これがまた! それからーー」


「主観入りすぎだろ。あと俺に関係がありそうな情報だけ言ってくれ」


『あと無駄にテンション上がってキモイです』


 いつしか私はテンションが上がって立ち上がってしまい、熱く語ってしまっていた。対する考輝さんの目は冷ややかで、ユッキーには良い笑顔で罵倒されてしまった。



「す、すみません……」


 私は消え入りそうな声で謝りながら、席に座る。恥ずかしさで耳まで紅くなっているのが分かる。



「えっと、特犯のメンバーはあと二人いまして、そのうちの一人、隊長にあたる人が春川蓮夜さんです」


『考輝さんのお友達の方ですね』


「……現在、あいつは警察に勤めている。身体能力は高いし、別にそういった部隊にスカウトされてもおかしくない。――そういえば、昨日ギアの話をした時、妙な反応をしていた。もしかしたらもうその特犯とやらに所属しているのかもしれないな」


 蓮夜さんの名前が出たとき考輝さんの眉が一瞬ピクリと動いた。





「これが主人公サイドの話です。次に悪役――秋山さん達の話です。

 秋山さん達の所属する組織の名前はNew World Ragnarok——通称NWRと呼ばれていて、主に日本でテロ活動を行っています。要人暗殺、政府の施設爆破、無差別殺人と凶悪な犯罪を起こしています。特犯はNWRだけを相手にしているわけではありませんが、作中ではラスボスのような扱いを受けています」


 考輝さんは口に手を当てて考え込み、ユッキーの方は、ほうほうと感心したように頷く。本体、というよりも中の人の立花さんは無表情キーボードをカタカタと打ち込む。正直、この人がユッキーを動かしているとは思えない程だ。

 画面の中のユッキーはとてもにこやかに私に問いかける。


『そのテロ組織の目的は何ですか? なにか自分達の意見を通すためにそういった活動をしているのですよね』


「今から四年後に日本の国民全員にサイボーグ手術を受ける義務を追加しようとする動きがあるんですけど、その義務の反対です」


 漫画ではこの義務を作るための法の整備が進められており、一般人の間でも賛否は分かれていた。NWR以外にも、この義務の反対を主張して過激な活動を行っている人達もいた。



 私の話にユッキーは不思議そうに首を捻る。考輝さんも顔をしかめていた。


『正直、私はそんな義務とか興味ありませんねー。私電脳世界居住ですし。肉体とかないですし』


「脳の改造は俺にとっては専門中の専門だな。時期尚早と言う事はあるかもしれないが、それでもテロ活動をしてまでも止める事はない」



「まぁ二人のテロをする個人的な理由は明かされていませんから、その義務と関係あるか分かりません。――とりあえず、基本的な情報はこのくらいですね。お二人とも敵サイドなので、まだ詳細な情報も過去も分かってないんです。あまりお役に立てなくてすみません」


 残念な事に今私が二人に伝えられる情報は少ない。やはり漫画では敵の情報はなかなか出てこない。立花さんに至っては、ユッキーは何回も登場しているが本体である彼は一回も作中に出てこない。ファンの間では実はユッキーに本体はなく、ユッキーAI説が有力になるほどだった。





「いや、それでも出来る事は多い。そのために、立花も呼んだ訳だしな。特犯、NWRについて調べられたか?」


 考輝さんがユッキーの方を見るが、当のユッキーは口を尖がらせている。



『だからユッキーですよ……。ま、勿論そちらは調べましたよ。特犯は正式な部隊としてはありませんが、実在していますねー。機密情報みたいなのでちょっとプロテクト固いので、まだ全部情報引き出せていませんけどねー。あ、お友達の春川さんもしっかり所属しているみたいですよ』


 ユッキーが手を振ると、新たに空中に画面が出現した。画面には現在特犯に所属している人の顔と名前がリスト化されていた。


「メンバーは乃木、京極、九鬼、鍋島、中谷、春川の六人で、隊長はこの乃木という男か。石田、この中で知っている顔はいるか?」


「い、いえ知っているのは春川さんだけです。それにしても、この一瞬で調べたのですか?」


 ユッキーがこういったハッキングなども含めた情報取集能力が高い事は知ってはいたが、こんな風に政府の機密情報をポンと渡されると、びっくりする。そもそも、この情報をこんな風に見ているのがばれたらマズイ気が。多分、完全に捕まる。



『私、電脳世界において不可能な事なんかありませんから! あ、逆探対策もばっちりなので、見つかる心配はありませんよ』


 ユッキーはドヤ顔とピースで自身のスペックを自慢する。不安に思っている事が顔に出ていたのか、フォローもされてしまった。


 こういう自分に絶対の自信がある所が考輝さんと似ている気がする。だから結構仲が良いのかもしれない。



「特犯の方はこんなものか。NWRの方はどうだ?」


『そっちの方はヒットなしですねー。名前が違うのか、そもそもまだ存在していないのかもしれませんね。あとさっき石田さんの言っていた未来の私の同僚になるかもしれない人も調べてみたのですけど、水無瀬は見つかりましたよ。大量殺人の容疑で指名手配されていました。起こしている事件を見ると、そうとうクレイジーみたいですね』


 NWRの方はあまり成果がないようだ。そもそもNWRが反対しているサイボーグ手術の義務化がないため、なくて当たり前なのかもしれない。

 水無瀬さんは作中で一、二を争う狂ったキャラだったけど、すでにもうやらかしているようだ。



「お前で見つけられないとなると、存在していない可能性は高いな。……一度話を整理するか」


 考輝さんは懐からメモ帳とボールペンを取り出すと、現状をまとめ始めた。特犯とNWRでページを二分割し、縦軸に時系列を書いていく。


 現在は特犯のメンバーは六人。その内の一人は考輝さんの友人の春川蓮夜。五年後には蓮夜さんが隊長でメンバーは四人。蓮夜さん以外はメンバーが一新される。


 NWRは現在において存在が確認されず、考輝さんの部下はユッキーと水無瀬を確認。五年後には考輝さんが幹部となり、ユッキーや指名手配中の水無瀬も部下になる。



 こう見ると、NWRの情報が圧倒的に少ない事が分かる。


「せめてNWRがいつ生まれたかを把握したいな。設立された時期や、活動を始めた時期は分からないか? あと俺達がいつからNWRに所属しているかだ」


「えっと……今から四年後に犯行声明を出したテロ活動があります。それ以前も活動しているかもしれませんが、確実に活動しているのはここからです。考輝さんは組織の古株扱いされていたので、設立メンバーにいる可能性が高いです」


 正確に覚えていなかったので、慌ててノートをめくって数字を確認する。そして言ったものから考輝さんはメモ帳に書き加えていく。



『設立メンバーって、また話がややこしくなりそうですねー。ちなみに最初にNWRが起こした事件ってどのようなものだったのですか?』


「博物館の爆破でした。閉館間際だったので人的被害はあまりなかったようですが、博物館一つをまるまる跡形もなく消し飛ばしたみたいです」


『博物館ですか? しかも人が少ない時間って変な所狙いますねー』


 コテンと首を傾げる仕草をするユッキー。可愛い。



「ちょっと不思議ですよね。漫画の中では、デモンストレーションだったんじゃないかって言われていました。政府に与えた動揺も相当大きかったようですし」



 何か博物館にあったのではないか、という話もあったが、その後の漫画内でそれはないと言及されていた。疑問に思った蓮夜さん自ら調べたらしいが、何も見つからなかったらしい。



「博物館の名前は分かるか?」


 メモを取り終わったのか考輝さんも博物館の話に食いついてきた。



「えー……国立電子文化博物館みたいな名前だったと思います。でも何もないと思いますよ。その時春川さんがその博物館を調べたらしいですけど、何もなかったようでした」


「……しかし、現状他に手がかりはない。どうせお前に街を、世間を見せた方がいいとも思っていたからな。ついでに行くのもーー」


「――考輝さん!」


 私は思わず立ち上がる。

 考輝さんの話している途中だというのに、それすらも遮ってしまう。


 当の考輝さんはポカンとし、ユッキーも一瞬フリーズしていた。



 しかし、私はどうしても黙っている事は出来ない。


 どうしても確認しておかなければならない事があった・









「そ、それっていわゆるデートのようなものに分類されるのでは!?」



「……お前ってもう少し人並みに欲望を隠す事できないの?」




どーでもいい裏話


「そういえば、なんでユッキーって元が男なのに、女のアバターなんですか? 元も可愛らしい見た目ですけど」


『単純に女に生まれたかったのと、ネットは女の方が何かと都合が良いですからー』


「あー、姫プレイとか聞いた事あります」


「そういえばこいつ、昔イラついた時、ハッキングして姫プレイしている連中の顔写真をゲーム内でさらした事あったな」


『ブサイクやネカマを集中的にさらしましたW』


「電脳の女神怖っ」




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