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7 ちょっと夜中に練習してみただけだよ?

なんともよくわからない世界である。

獣人なんて普通に街を闊歩している住人の一部ではないのか?

ファンタジー世界で犬や猫の獣人なんて普通にヒロインだったりパーティー組んでる筈なんだが。

少なくともハナやコロは人と変わらない知能がある。しかも、革問屋では何も言われなかった。


「ヨシフルさん、革問屋を見て何も思いませんでした?」


今日の不寝番はコロと組んでいる。門外の夜営地だから山の中みたいな危険は殆ど無いのだが、一応、立てているんだろう。


「俺たちが客扱いされていなかったのは分かった」


んーとコロが首をかしげている。

なんか可愛い。男の娘みたい。


「確かに、彼らにとって我々は客ではないですからね。革問屋は店に見えませんでしたよね?」


俺は頷く。


「でも、塩屋はヨシフルさんにも見つけられました」


当たり前だろ、看板見たらわかる。


「革問屋には看板はありませんよ」


あ、うん。何だかよくわからん。


「タカさんは犬が居るから泊まれないと言いましたが、タカさん達も泊まれる宿は限られます」


なんで?


「村は獣を狩って生計を立てているからです」


まったくわからん。


「ヨシフルさんの様な魔砲師は大抵の場合、貴族に仕えて街の警護として獣を倒すんです。皮を剥いだり肉を食べたりはしません。少なくとも、表向きは」


と、余計に分からない説明をされた。


「ますます分からんのだが・・・」


あははとコロは困ったように笑う。


「肉を食べる時って何をしますか?」


「肉を食うとき?焼いたり蒸したりして熱を通すよな」

生で食べるのは鶏が一部の地域、あとは、馬肉だったか。日本の話だが。


「まあ、それはそうなんですが、街の人達は食べる前に神棚に御供えするんですよ。『殺してません』って言いながら」


なんじゃそりゃ。


「ほら、猪も二本脚で歩くから、人と同じ様に殺してはいけない掟があるんです」


でも、狩ってるんだよね?


「狩人は倒れた獣を見つけて『助けたお礼に肉を分けてもらう』んです。掟では、街や畑が荒らされた場合は、食べるためではなく、イクサだから、殺して良いんです」


まったくもって謎だ。いや、理解は出来る。

日本では、江戸時代には肉をクスリとして食べたって話だ。ここにもそれに似た仕来たりか宗教があるんだろう。面倒くさい話だが・・・


「すると、山の村は罪人の集団になるのか?」


コロは確かにと納得している。それじゃダメだろ。


「いえ、一応、殺したのではなく、死体を見つけて利用しているという事になっているので、罪人ではないです」


面倒くさい話だ。日本の悪い部分を受け継いでやがるのか。言い訳思い付いたら掟が掟で無くなるとか、まるで・・・、おっと、政治批判はそのくらいにしておこう。


「何となく分かった」


きっと江戸時代の身分制度外に分類されるんだな、俺たちは。


さて、そんな話は終わりにして、ちゅとと練習しておきますか。


「それは?」


リュックからM95を出すとコロが不思議そうに聞いてきた。


「見たことなかったよな。こいつは同時に6発発射できる銃だ。猪なら使うところが無くなるだろう威力があるはず」


辺りを見回すとおあつらえ向きの岩山を見付けた。

「ちょっとあれを撃ってみよう。届くかな」

カシャ

ハンドルを操作して装填、夜にはスコープなんか使いにくいし、そもそも俺はドットサイトを愛用している。こいつならスコープ使わなくとも大抵なんとかなるからな。6発も飛べば1発くらいは当たってくれる。ハズ


「え、あれは・・・」


こんな街の近くに岩があったのは見ていない気がするが、見逃したんだろう。

パシュ

小さな音がした。うん、夜だからよく判らないや。とりあえず、ショットシェル分は撃ちきっておこう。

適当に狙って5連射。3射目で頂きを吹き飛ばしたのを確認して、4射目、5射目は下の方を狙って見た。


「あ、倒れる・・・」

やらかしたなぁ~と思ってると


「うそ・・・」

コロも驚いていた。


「コロ、とりあえず内緒な、これ」

コロは口を開けたまま岩山のあった辺りを見つめていた。


「鬼だ、鬼が出たぞ!」


何やら門から人が出てきてこちらに叫んでいる。

そして、門から複数の人が街道へと走って行った。


「ヨシフルさん!」

「内緒だ、俺が持っていたのはコレ、そして、コロは何も見ていない。な!」

俺は89式をコロに見せながらそう迫った。


「でも・・」


コロは何か言いたげだが、


「岩山を崩したのはきっと鬼だ。な!」


「だから、その・・・」


「な!」


「・・・うん・・・」


何か言いたげだが、黙って貰った。

これでウヤムヤになるだろう。


「鬼が倒れてるぞ!」


街道から戻った一人が門の前に居た仲間らしき人影に叫んだ。


「良かった。解体の人手を連れていけ」


そんな会話の後に複数がまた街道へと向かった。

なんだ、鬼とか言うのも集団で掛かると楽に倒せる獣の事なんだ、そいつに岩山を崩せるのだろうか・・・

心配だ。




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