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15・帰ったら普通に平穏だった?

 美人さんと分かれた俺たちは来た道を戻ることにした。もう昼だからどう頑張っても今日中に帰ることは出来ない。野宿は確定だ。


「もしかして、連中付けてきてるんじゃないでしょうね」


 チッパイさんはそう言って辺りを警戒している。


「そうかもしれないけど、簡単には見つけられないよ」


 ハナが苦笑しながらそう返答した。ハナが見つけられない相手を俺やチッパイさんが発見することなどできやしない。


 昨日よりも荷物が減っているので野営地は朝出発した地点より少し下流になった。ここまで来たら随分なだらかな土地が多くなる。


「もう日も沈んだし、この辺りが限界だろうな」


 俺は二人にそう提案した。


「そうだね。火をつけないと暗くなるよ」


 ハナがそう言って火を起こし始めた。チッパイさんは俺から少し距離を取った。


 今日は昼を鬼にご馳走になったから少し食材が余っている。大したものは無いが量は昨日よりも多く食えた。


「じゃあ、今日は私が不寝番やるから」


 チッパイさんがそう言ってさっさとその場を仕切りだす。


「アイ、暗闇でちゃんと見える?私は鼻が利くし、ヨシフルは暗闇でも見える魔器があるから大丈夫なんだけど」


「昨日はハナが不寝番したでしょ、コイツに不寝番やらせて襲われても嫌だし」


 チッパイさんは頑なだ。


「一人が怖いなら、私も一緒にヤルよ?誰だって初めては怖いけど、私が居れば大丈夫だよ」


 ハナが良い笑顔でチッパイさんにそう言うが、不寝番の話じゃないよね?それ。


「べ、別に怖い訳じゃないし。コイツが嫌なだけだし」


 そう言うチッパイさんをハナが笑う。


「本当に嫌いな相手なら、アイは付いて来たりしないよね」


 チッパイさんが無言でそっぽを向いた。


「まあ、二人で話してなよ。俺が見てるからさ」


 女子会を始めた二人から俺は離れて見張りをすることにした。普通そうするよな?


 適度に二人から離れ、俺は見張りを始めた。周りは藪の多い場所であまり見通せない。この辺りはちょうどひらけた場所で、河原のようになっている。少し先が小さな滝なので、自然の砂防ダムみたいな場所なのかもしれない。

 ここから上を見ると星空が見えた。地球とは星の並びが違う。そりゃあ、地球じゃないのだから当然だ。ここは異世界なのか、それとも、同じ宇宙の、或いは同じ銀河系の違う恒星系なのだろうか。天文学に詳しくないからよく分からない。少なくとも、日本でよく見る星座は一つも見ることが出来なかった。


 たった二日歩けば関に着く、ただ、あの向こうがどうなっているのかは分からない。彼らがやって来たのだから、人が歩ける道はあるのだろう。ただ、その道は散歩やハイキング程度で越せるような気軽な道とは限らない。その程度の道なら、ここも交易路として栄えているはずだ。あの滝の向こうだって、ここ以上に険しい道しかないのかもしれない。


 そんなことを考えているとハナがやって来た。


「ヨシフル、アイは寝たよ。襲うなら今がチャンス」


 冗談ぽくそういう。


「そんなことしたら後が怖いだろ」


「美女が二人いても何もしないって、そのうち気が狂っちゃうよ?」


 ニヤニヤとハナがそんな事を言う。まあな、それは言えてるかもしれんが、だからと言ってどうしろと。


「私なら今からでも構わないよ?」


 それで、誰が見張りをやるんですかね。それとも、ハナはヤリながら見張るとでもいうのか?


「さすがに交尾臭を出しながら見張るのは無理かな」


 平然とそう笑っていた。


「アイも照れ隠しだから、そのうち慣れたらあんなツンツンはしなくなると思うよ?」


 そうだと良いんだがな。


「それで、ハナも寝ろよ。しばらくは俺が見張ってる。起きたら代わってくれ」


 そう言うと、ハナは頷いてチッパイさんの元へと向かった。


 ハナと交代したのは夜中だったろうか。正確な時間は分からないが、俺も仮眠をとることにした。流石にチッパイさんのところに行くのはまずいと思ったので、少し離れて寝た。


「起きなさい」


 声がしたので目を開けるとチッパイさんが居た。すでに明るかった。


「おはよう」


 声をかけたがやはり警戒されているらしい。


「あんた、夜中にハナと何してたの」


 はぁ?何言ってんだろうか。


「何もしてないが、どうしたんだ?」


「ハナが優しかったとか可愛かったとか言ってるんだけど?」


 チッパイさんが何言ってるのか俺には分からない。


「アイ、気になるならヨシフルに頼んでみなよ」


 後ろからハナがニヤニヤそんな事を言っている。


「わ、私は別に興味ないから!」


 チッパイさんがそういう。ハナが俺を見てニヤニヤしている。何やってんだ?



 そんなことをやりながら朝食を食べて出発した。村に着いたのは夕暮れ前だった。


 よくある異世界ものだったらここで村が燃えていたりするんだろうが、そんな物語な事は起きていなかった。普通に村は平穏だった。


「ヨシフルたちが帰って来たぞ~」


 村の入り口で出会った村人が皆に知らせるように声を張り上げた。され、おばあのところに報告に行くとしますか。 


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