11 魔砲ってチートだよな
なんだかんだで翌朝である。
ん?
すまないがノクターンに書くような話は一切ない。いや、ほら・・・
まあ、その話はいい。実はここで大きな問題があることに気が付いた。
「ガスも弾ももう残りわずかだ・・・」
そう、何だかんだで昨日はずいぶん消費している。ガスガンというのは打ち出すBB弾以外にガスが必要になる。世界の趨勢はCO2だが日本はいまだに代替フロンだ。確かに、未だに代替フロンの大気解放とか一見ヤヴァい話に見えるのだがそれにはいろいろ訳がある。
海外でCO2、いわゆるグリーンガスが主流になっているのは威力にも原因がある。グリーンガスを使っている国というのは日本よりも遊戯銃の規制が緩い。そのため、高圧のCO2ボンベが無理なく使用可能というのが大きいだろう。日本では過去の違法改造の話が尾を引いていて高圧ガスの使用に二の足を踏んでいるというのが大きい。本来であれば環境負荷を考えて早々に移行すべきなのだが、なかなかそのような動きは出てきていない。
既に一社、CO2に挑戦しているメーカーもあるが、未だに日本では唯一の例といってよい。
CO2にはフロンにはない恩恵がある。フロンは真夏でも連射によるガスタンクの冷えや銃本体が冷えてしまってガス圧が弱まるという欠点がある。ハンドガンなら全く気にならないが、ライフルとなるとせっかくの連射能力をスポイルしてしまうのでその分セールスにはダメージとなる。
ただ、サバゲで使う場合、そもそも連射など余ほどの事がないと使わないが。
そもそも、今のガスガンはマガジンにガス室を設けているのでいわゆるリアルカウントよ呼ばれる実銃準拠の弾数しか装填できていない。映画みたいにバカスカ撃てるのはノーマルで実需の二倍から三倍、ぜんまい式の多連マガジンなら数百発という電動ガンの話だ。ガスガンは実銃同様に残弾の心配をしながら一発づつ撃つのが基本である。
まあ、それでだ。日本では違法改造への忌避感から多くのメーカーがCO2には冷淡で、有料のサバゲフィールドにも使用禁止という場所がある。まあ、国内メーカーについては徐々に使用可とするフィールドが増えているから使う分には安心できる環境が整いつつあるが・・・
そんな訳で当然ながら俺の銃もフロンガス。ガスコンロ用と外見がほぼ同じガスボンベを使う。残りはあと一本のみ。弾については昨日撃ちまくったので残り五百発ボトル一本。
俺の持つバックはなんでも入るのだが、異世界ラノベ物みたいな消耗品の補充は出来ないらしい。
「困った。弾もガスも残りわずかだ」
そう言って悩む俺を見る呆れたような視線。視線の方を見るとチッパイさんが居た。
「本当にバカじゃない?魔砲師でしょ?」
蔑むような顔と声である。
「いやいや、俺のコレは魔法を込めて飛ばすわけじゃなく、この弾とこの缶に詰められたガスを使うんだ」
「だったら魔法で補充すればいいじゃない」
なんですと?魔法で補充?どうやるんだよそれ。
「私が知るわけないでしょ。魔砲師なんだからそのくらいできるんじゃない?」
いやいや、訳が分からんことを言われても困るんだが。弾が増やせるなら、ガスが充てんできるなら、そのまま手から火か水出した方が有効なんじゃね?あ、そうか、直接が無理なら杖とか剣とか。
「ハァ?バカ?杖や剣でそんな事できるわけ無いでしょうが。弓や砲を使うのが普通なんだけど?本当に魔砲師なの?信じらんない」
チッパイさんはそう呆れたように仰り、家を出ていく。
やはりよく分からん。魔法といえば杖とか剣を使うんじゃないのか?魔力を増幅する宝石付けたヤツ。
そうは思いながらもチッパイさんが言うように弾を出せるんじゃないかと空のボトルをもって念じてみた。
「出でよ、BB弾」
出なかった。おいおい、出るんじゃないのかよ・・・
「出でよ、ガス」
ボンベもダメだった。
どうすりゃいいんだよコレ・・・
ボトルの弾と今あるボンベを使い果たしたら俺の持ってるガスガンはすべて無用の長物じゃないか、そして俺も普通の人間になってしまう。どうすりゃいいんだよ・・・
そうは言っても現実が何か変っちゃくれない。今日は少し遠出して昨日のような獣の群れが他にいないか捜索することになっている。
残り少ないボトルとガスをもって今日も出かけることになった。
「よし、今日は少し山に入ることにする。猪よりも大きな獣が居るかもしれんので気を付けるように」
タカがそう言って集めた狩人の班分けや捜索範囲の指示を出す。
「ヨシフルは俺と一緒に来い」
俺たちは最奥の捜索に向かうらしい。場合によっては鬼と出くわすかもしれんというのでM95を手にタカの後を追う。
街で岩山を崩壊させた威力があるこいつなら鬼にも何らかのダメージは入るはずだ。弾が残り少ないのでボルトアクションというのも好都合。
村を出て何時間になるだろうか、すでに昼を回っている。獣道なのでそう遠くに来たわけではないが、すでに森の様子はいつもと異なっていた。一言でいえば、山深いというやつだな。
ボケっとそんなことを考えている時だった。
「鬼だ。左の沢筋にいる」
先行する狩人からの手信号を見たタカが周囲に小声でそう注意を促した。
俺はM95を構えて鬼が居るという沢筋を見た。
運の悪いことに鬼があたりを見回したときに目が合ってしまった。
クソデカイ、まるでロボットか巨人だろ、あれは。鬼ってあんなんじゃないだろ。
そんなことを思いながら引き金を引いた。木が邪魔で届かない。木を数本なぎ倒しただけに終わった。
「ヨシフル!無暗に攻撃するな!!」
そういう声が聞こえたが撃ってしまった以上もう後には引けない。俺は続けざまに五連射して鬼の右腕を弾き飛ばし、六連射目で頭を吹き飛ばした。
あれ?M95はショットガンベースで1シェル30発の弾が入っており、6発同時発射だから五連射しかできない構造のはず。がむしゃらに撃ちまくって七連射したわけだが、あれ?
皆が鬼に駆け寄る中で俺はM4の空マガジンを取り出した。そしてガスを抜く。弾は既に撃ち切っている。
「弾よ、ガスよ」
出来てる。弾が見える。ガスも充てんされてる・・・
なるほど。ホルトストップ掛かることを当然と思ってたからそうなってたんだろうか?これ。
周りを見て試しにM4をフルオートで撃ってみた。結局冷えて連射は低下したけど弾がなくならないように念じればそうできるみたいだ。
なんだよコレ。もっと早く気が付けばよかったよ・・・