10 テンプレって、なんだっけ?
婆さんの話がおわり、俺は更に呆気に取られた。
この状況でチッパイさんと結婚?
きっと初日に寝首をかかれて終わりだろ。打首の執行者が誰かと言う違いしかない。
「打首の準備が出来ました」
チッパイさんが戻ってきた。
なんだ、どのみち執行者はチッパイさんかよ。
「そうか、では、猿の首をはねておきな」
婆さんはチッパイさんにそう指示する。
「私が首をはねたいのはそこの無礼者です」
チッパイさんは揺るがない。そりゃそうだ。
「アイ、お前も私と同じ力があった筈だ。その男を見てわからぬか?」
「だからです。力がありながら猿の言いなりになるような奴は生かしておけません」
チッパイさんが俺を睨む。整った顔で可愛いよりもきれい。鍛えたからだはきっちりした肉付きでものすごくスタイルが良い。可愛いチッパイとお尻が愛嬌があって良い。
「許せんのは、体を見られたからか、それとも『体を見られたからかにほかなりません』」
「して、ヨシフルは何故、途中で止めた?」
チッパイさんが叫んでいるが、婆さんは完全無視である。
「流石に見世物じゃないですから、猿の隙を伺ってました」
そう、ヒイヒイハァハァうるさい猿が隙を見せるのを待っていた。
「隙を見せるのが事を始めてからだったら、どうしたね?」
あ~、それは考えてなかったな・・・
「そこまで考えてませんでした・・・」
俺は正直に答えた。
「これの体に失望したわけではないのだね?」
チッパイさんが騒がしいが俺も無視である。
「はい、チッパイはむしろ好みです」
罵声が酷い。ってか、猫が良いのかって、そんな斜め上な・・・
「アイさん、俺は可愛いチッパイとお尻は好きですが、それはあなたのスタイルが良い体があってですよ。猫が良いと言ってません」
チッパイさんが静かになった。
「ヨシフルよ、ハナと仲が良かったな」
婆さん、それは爆弾じゃ・・・
「お前、ハナに手を出したのか、犬とはいえ、いや、ハナは妾よりも豊満で良かったろう」
何言ってんだ?チッパイさん。
「いやいや、いきなり尻尾触って嫌われた」
何故かチッパイさんがより怖い顔をしている。
「よほどハナに気に入られたらしいな。お前はハナと暮らせばよかろう」
そんな睨むなよ・・・
「裸を見られたアイがハナとこの男の面倒を見るか」
婆さんが笑っていた。
「私は!」
「まあ、良いではないか、ハナが居ればそ奴もアイに容易く手は出せまい」
うん、何だコレ・・・
夕方、頭を撃ち抜いた猿が更に打首となった。
そして、俺はタカの家に居る。
違うな、タカは嫁の家に行ってそれまでの家が空き家になったので俺に譲られた。ハナ付で。
今日は色々慌ただしかったらしい。
俺は婆さん所に居たから聞いた話だが、先代狩頭が今日の戦いで負傷したらしい。もとから話があったタカの婿入りが負傷で強引に進められて、タカは先代狩頭の家に放り込まれたそうなんだ。
それが猿が打首となったすぐあとの話。まあ、今しがただ。
ハナによるとそもそも、タカもその気は以前からあって、切っ掛けを待っている状態だったとか。
「私の面倒見る人が出来たらって約束だったからね。ヨシフルが来てくれて丁度良かったんだよ、で、アイは何してるの?」
ハナは不思議そうにチッパイさんを見る。
「こいつがハナに手を出さないように監視しに来た」
ハナはヤニヤしながらチッパイさんを見る。
「ヨシフルは耳や尻尾に興味があるだけで、私に手は出さないと思うよ?それより、アイこそ大丈夫?この変態、猫に興味津々だから、ペッタンコのアイが狙われると思うなぁ~」
人を何だと思ってるんだ、こいつは。
「ハナは充分に魅力があるぞ?」
「へへっ、でしょ?街の出逢い屋に居る犬より自信ある」
そう言ってアイを見る。見るのはチッパイさんかよ。
「所詮、色仕掛しか出来ないわけか」
「ハァ?筋肉には色仕掛なんて無理だし」
あ~、仲良さそうで何よりだ・・・
実際、何だかんだで仲の良い二人だった。
「お婆様もなんでこんなのを婿にせよなどと、流石に歳なのだな」
「まあ、お婆はそろそろ引退したがってるし、魔砲師なんて珍しいの捕まえとくにはちょうど良かったんじゃない?アイも可哀想に」
二人の意見は一致している。美女二人とひとつ屋根のしただから良いだろうって?俺は置物か何かですかね。
ちなみに
「どうぞ、手を出せるものなら、出しても良いよ?出来るなら」
と、胸チラしながらハナは言った。
「妾に手を出す?どうぞやりなさい。お婆様もはやく孫の顔が見たいでしょうから、ほら」
チッパイさんはどうせ見せたのだからと・・・
「ほら、まだ知り合って日が浅いし?」
「何日一緒に居るんだっけ?」
と、ハナ。
「貴族は知らぬ相手と、突然結婚だ。領主の娘だからそのくらいの覚悟はある。なに、もう妾の裸を見た後ではないか」
と、チッパイさん。
スイマセン、俺はヘタレです。




