プロローグ
木々の中を下草の音を極力たてないように歩く。
幾人か人影が見えるがこちらに気付いた様子はない。
そっと窪地に身を潜めて射程に入るのを待つ。
「こっちからなら手薄みたいだ」
敵の声が聞こえた。そうそう、君らはまだ味方に見つかって居ないからね。今回の配置ならここは手薄だよ。
相手が窪地を覗きこめる位置まで近付いた。
「居ないな、後はそこの茂みだけだ」
彼らには光の加減で窪地がよく見えないらしい。
構えた銃の引き金を引く。
カシュンカシュン。
「「ヒット!」」
は~い、二丁上り。
声からするとまだ居るはずだ。
「茂み手前の塹壕だな」
良かった。間違えてくれている。
パラパラパラパラパラパラ
電動の音が響いて窪地より左寄りに着弾している。
一人が塹壕に駆け込む。
カシュンカシュンカシュン
「ヒット!」
「本当に塹壕か?」
敵の声が疑問系にかわる。
「そもそもガスだから、あの三人の誰かだ、ヤバイなぁ~」
敵は戦意がかなり低い。よし、いけそうだ。
「おい、まだ抜けないのか」
新に敵が増えた。手練れのガルフだ。こいつは大変だ。
「相手がガスなんだ」
ガルフの姿が微妙に見えるが当たるかどうか怪しい位置だ。
分からない程度に窪地から身を乗り出してガルフを撃つ。カシュンカシュン。
「その音はCQB、タイガーか」
やっぱりバレた。
塹壕から窪地にかけて面制圧かけてきやがる。そう言えば、ガルフの奴はLMGだったか、メンドクセェ~
とは言え、声は出せない。位置がバレたら終りだ。
「タイガー、出てこい」
出ていけるか!だいたい、連中は知らないが、ここが抜かれたらフラッグまで一人も居ないんだよ。
パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
マッタク動けないが、射線は確保できている。
支援されて突っ込んできた敵を撃つ。カシュン
「ヒット!」
「窪地か?いや、音は茂みだ、そこか!」
ガルフがちょうど頭上の茂みを撃ちまくる。
「逃げたか」
「茂みのトーチカが怪しい、気を付けて囲むぞ」
ガルフが大声で指示を出す。
敵に筒抜けだが、少数に対してはこれが案外効果的だ。焦って敵の捕捉に身を乗り出したら負け。奴の狙いはそこだろう。
「終了~」
俺は窪地から立ち上がる。
「そこかよ!」
ガルフから声が上がる。
「秋山さん、それゃないわ~」
ガルフこと、萱場が呆れている。
「あと少し前進してくれたら一網打尽だったんだが」
俺は笑い返してやった。
サバイバルゲーム。一時はかなり流行ったが変な奴らが違法改造して事件起こしたり、ドラマやマンガで悪役で扱われたりして印象が悪くなっている。呆れたことに、遊戯銃規制が入る前にはテレビ局が威力増強した「カスタムガン」をまるで市販品かのようなナレーションで空き缶撃ち抜く映像流した事もある。
その様な影響だけではないだろうが、今ややっているのは知った連中ばかり。
「今日は楽しかったよ。久しぶりだったが、良いね」
片付けしながら萱場とはなす。萱場はこのチームのリーダーで、俺は数年ぶりにサバゲに参加していた。
「久しぶりであんなことやるのは秋山さんくらいでしょ。仕事が暇なときには参加してくださいね」
「一段落ついたから、ガスメインで参加するよ。電動で虐殺は萱場の十八番だから」
笑いながら萱場を見る。
「虐殺って・・、まあ、俺みたいにずっとやってる人が少ないからかなぁ~」
ちょっとしょげているらしいが仕方ない。
「今時イベント行くようなレベレは一握りだからな。俺も無理だ。しばらくやり直しだな」
そう言って慰めておく。
流行った頃からやっていてメーカー系イベントや全国規模のゲームの経験がある奴なんて少ない。今でも味方からすら姿を消すゲーマーや長距離射撃がヤバイゲーマーはたまに居るらしいが、一時期みたいに変人集団となると見なくなったらしい。