警告
「確かに受け取ったよ。すぐ作るから待ってて」
ミズキとの激闘(?)を終えたエルは、一人でマーリンの研究室まで来ていた。
「いやぁ、さぞかし大変だったろうねぇ」
「…どうせ見てたんだろ?」
「うん、勿論」
余りの即答。
「女の子を泣かせるのはよくないぞー」
「……」
「『私、大きくなったら○○君と結婚するー!』なんて、幼い少女にはありがちじゃないか」
「なんで知ってるんだ」
「魔女はだいたい何でも知ってるのだよ」
はぁ、と、エルが大きなため息を漏らした。
「まあ、仕方なかっただろうけどね。あのまま君が全力を出していたら、あの屋敷を十回は壊せる」
「…ああ」
おそらく部品を取り付けるだけで良かったのだろう。すぐに「虫除け器」は完成した。
「ハイこれ。連続使用は半日が限度ね。それ超えたら暴走するかも」
「…暴走すると、どうなるんだ?」
「大量の虫が引き寄せられる」
「…気をつけるよ」
「ありがとう」と言って、彼は地下室を立ち去ろうとする。
しかし、何を思ったか、その場に立ち止まった。
「マーリン、聞きたい事がある」
「…情報料は?」
「生憎いまは飴玉しか持ってないぞ」
「それで許す」
手渡された飴玉を、彼女はすぐ口に放り込んだ。
「この間捕らえた賊のなかに、魔法武器を持っているやつがいた」
「……」
「お前が、関係してるんじゃないか?」
マーリンはしばらく黙ったあと、笑いだした。
「いやぁ、心外だな。遂に私にも兵器密売の容疑が掛けられたのか」
「お前、魔法道具売った事があるだろ?」
「まあね。でも、盗賊なんかにそれを渡すほど私は落ちぶれてないよ」
「そうか…。ならいいんだが」
彼女がまた話し出す。
「このままじゃ飴玉せびっただけに思われるだろうから、情報を提供しよう」
「?」
「君が捕らえたという賊、奴らが『紅い蠍』という組織を作っている事は知ってるかい?」
「…初耳だな」
「ただの悪党集団さ。大した奴らじゃなかった。この前まではね」
そうして、一枚の紙片を差し出した。彼女は続ける。
「最近奴らは、そこと繋がってるらしい。高価な魔法道具を買う金は、そこからの援助じゃないかと睨んでるんだ」
「…!?」
エルは驚いた。なぜなら、その紙に書かれている名前が、衝撃的だったからである。
「目的は…何なんだ?」
「分からない。ただ、良からぬことを企んでていることは明らかだよ」
いつにも増して真剣な表情のマーリン。
「十分、気を付けてくれ」
「…ああ」
事件が、起ころうとしていた。
前回の反動で今回は短めです。
ここから物語が加速していきます!
(2017/08/08 改修)
大きな修正はありません。
やっぱりここも短いかな…?