表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Black Paladin ~聖騎士団第十三部隊~  作者: Noire
第二章 四つの戒律
20/21

雪国の守護者たち ~出会い、休息~

 雪国の屋根は、やはり白く染め上げられていた。

 その民家の立ち並ぶ通りを、馬車で駆け抜けていく。

「…妙だ」

 意外にも、街は荒れていなかった。奇麗な家々が、不気味なほどに整列している。妙な点といえば、その中に人の気配が一切ない事だろうか。


 フローレが沈黙を破る。

「…町の人たちは…どこに行ったのでしょうか?」

「分からない…。でも、異常事態であることは確かだな」

「……」

また沈黙が戻ってくる。しばらく、ただ過ぎていく景色を眺めるだけの時間。



 …しかし、それをまた破るように、馬車の目の前に「誰か」が立ちふさがった!

「…待て。貴様ら、何者だ…」

「…!?」


 見れば、その人影は長大な剣を構えて、こちらを警戒している。

「…敵…!?」

 とっさにエルは剣を抜き、間合いを詰める。相手は女性のようだった。


「何を目的に、この街に立ち入った…?いや、そもそも関門は閉められているはず…」

「…俺たちは聖騎士だ。ミラディアンから派遣されてきた」

 そう告げたものの、向こうは殺気を緩めない。


「嘘だ。そんな報告、ここ数日の間に入って来てはいない」

「…っ」

 こいつは、誰だ? というか…戦わなくてはいけないのか?エルの頭に不安がよぎる。


「…とにかく…その身柄、拘束させて貰うぞ」

 …そう彼女が言った時。


 エルの首筋に、なにかが刺さった。


「…っ!?」

 同時に、抗い難い眠気が彼を襲い始める。

「ひゃぁ…!」

「うわ…ぁっ!」

 他の四人も、次々と謎の攻撃に襲われていた。


(…何なんだよ…一体…!)

 薄れゆく意識。エルは剣を取り落とし、その場に倒れ伏していた…。




* * * *




「…ううっ…」

 エルが目を覚ますと、そこは柔らかなベッドの上だった。 

「……!?」

 バッと毛布を跳ね除け、体を起こす。


 穏やかな光が差し込む部屋の中。視界の先には、謎の男。そして、ついさっきまで自分と対峙していた女性がいた。

「…目覚めました?手荒な真似をして、申し訳ない」

 男は、優しげにエルに話しかける。


「ここは、騎士団の北方支部です。連絡は来ていたのですが…」

「…なにも襲うことは無いだろ」

「彼女が勘違いで襲いかかってしまい…ごめんなさいね」

 その男が視線をやると、彼女は焦ったようにお辞儀をした。


「…仲間は、無事か?」

「はい。今はもう、向こうの部屋でくつろいでいますよ」

 ベッドから起き上がる。意外にも、その体はしっかりと動いた。


「申し遅れました、私の名はスロウ。彼女は、シルクと言います」

「…エルだ。一応、本国の一部隊の隊長をしてる」

 エルも自己紹介をする。…あえて、「十三部隊」であるとは言わなかった。


「一応、この街の人々は隣国に避難させてあります。不安となるのは…首都近くの人ですが…」

「仕事が早いな。…つまり、彼女は『その騎士たちが街に入ってきた』という風に思ったわけだ」


 また、シルクと呼ばれた女性が申し訳なさそうにする。

「…いいんだよ、警戒する事は悪くない」

「ほら、この方もこう言ってくださるし、そんな態度をしない」

「…うぅ…」

 スロウがまた厳しい目をする。…なんというか、シルクは彼に逆らえないようだ。




「あ…エル、おはよう」

「…のんきだな、お前ら」

 向こうの部屋では、すでに目覚めていた三人(フローレは…居なかったが)が紅茶を飲んでいた。


「あの…スロウとかいう人? あの人の聖剣で眠らされてたみたいだね」

「…?」

 アイリスが、エルの首筋あたりを指差す。その場所には、小さな矢のようなモノが刺さっていた。それはエルが抜こうとした瞬間、消滅した。


「刺すと相手を眠らせる矢…らしいよ。弓なしで投げて当てるらしく…」

「…敵じゃなくてよかったな。相当の手練れだぞ」


 エルは、彼らが敵ではないことをすでに信じていた。

 …第一、殺すのが目的なら、もう全員この世に居ないはずだ。

「仲間が増えたのぅ。喜ばしいことじゃ」

「…なのか…?」


 ミズキはいつも、無防備で無邪気に振舞っているが、その実意外と計算高いのだ。こういうときに言うことは、だいたい真理を突いている。

「…まあ、お前が言うならそうなんだろう」

「そう、私が言うからそうなのじゃ!」

 …彼女のこういうところは、彼にも分からないが。



「さて、しばらくこの支部にお世話になる事になるじゃろう。ここを拠点に、聞き込みと捜索を進めていこう」

「…場合によっては、交戦することもあるでしょうし…個別行動は避けたほうがいいですね」

 作戦会議。こういう場でのアルバートは強い。


「聞き込みをしながら、徐々に国を北上していくといいでしょう。残された人々を守るためにも、ジリジリと首都に近づいていく方がいい」

「…避難なら、あのテントが使えないか?」

「流石に、ミラディアンが受け入れる器はないかと…。最善はそれかも知れませんが、仕方がありません」

 冷静な判断。それはときに非情となる事もあるが、この場合は努力次第でどうとでもなる。

「…人々の避難は、支部の方々に任せましょう。安全な逃げ道も知っているはずです」


「あれ、フローレちゃんは?」

「…そういえば、姿を見ておらんな」

「…また、攫われてないといいけど」

 アイリスが笑えない冗談を飛ばす。

「あたし、探しに行ってくるね」

 彼女が席を立った。冗談のつもりが、本当に心配になったようだ。何だか落ち着かない顔をしている。

「待ってて!紅茶飲んじゃっていいから」

 すぐさま彼女は、部屋の外まで駆けて行った。即断即決。


 残された三人。話す話題もなく、ただ紅茶に口をつける。

「ほら、エルも飲むといい。武運を運んでくる紅茶じゃ」

「…ああ」

 口に含んだお茶は、何だか懐かしい香りがするような気がした。


「…これ、美味しいな」


雪国です。

昔…なぜか雪の結晶がトラウマだったのですが、今は治りました!

綺麗ですよねー(*'▽')

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ