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Black Paladin ~聖騎士団第十三部隊~  作者: Noire
第二章 四つの戒律
19/21

少女の故郷 氷雪の国

大変遅くなりました…(-_-;)

氷雪の国「キール」は、ミラディアンの北方に位置する国である。気候は寒冷で、極地にはブリザードが吹きすさび、都市部ですら一年中冬並みの寒さになっている。

 貴族たちの統治するこの国の国風は、外界から孤立しているのもあって閉鎖的かつ内向的。一年に一度の祝祭を除けば、他の国から人が入ってくることはほぼ無い。


 …馬車はいま、そんな国に向けて走っている。真夜中の平原を、北へ北へと突っ切っていく。気温も徐々に下がっていくのがはっきりと感じられる。

「…そこで、聖剣らしきものを持った軍団が、都市を支配し始めた…と」

「ああ。北方支部の人の話では、そういうことになるな」

 話題はもちろん、これからの事について。一行はまず、郊外の騎士団支部に向かい、情報を集めながら首都へ向かっていく…ということになっている。

「向こうの人たちも、協力を惜しまないつもりだ…って。ありがたいことだよね~」

「地元の事は地元の人に任せるのが一番。地の利が効くのは有利の極みじゃ」


 そんな中、フローレだけは一人、心ここにあらず、といった感じであった。

「あの…もしかして、支部があるのって、『マズリー』って街ですか?」

「…?ああ、そうみたいだが」

「…やっぱり…!」

 何かを確信したようで、彼女は暗い顔をした。うつむいている彼女に、アイリスが声を掛ける。

「…どうかしたの?」

「いや…実は、私の故郷がマズリーの街なんです…」

「「「「…!?」」」」

 突然の告白に、四人は驚きを隠せない様子だ。


「まさか、こんな形で帰郷するとは思わなくて…。不安と懐かしさが半分半分…って感じです」

「…書簡を出す余裕があるなら、まだ被害は及んでないさ。そう不安がることは無いよ」

 励ましの言葉を掛けるアイリス。フローレは続ける。

「…あの、もしよければ、思い出話を…しても良いでしょうか?懐かしい事を思い出してしまって」

「…別に、俺は構わないけど」

「うむ。情報は多いに越したことは無いし、存分に話すが良い」

 フローレの言葉に、周りも賛成のようだ。彼女の顔が少し明るくなった。


「では、お話しますね…」

 馬車の窓からは、雪に覆われた地面が見えるようになっていた。





 私がミラディアンに来る前は、マズリーの街で聖騎士の見習いをしていたんです。…母がミラディアンで聖騎士をしていたのもあって。

 訓練には、全くついていけなくて。いつも修練場の隅で本を読んでました。今となっては懐かしい思い出です。

 国を守るために戦う、女性騎士さん達に憧れてたんですが…。生き物を傷つけることに抵抗がある私には、正直大変でした。


 そんな落ちこぼれだった私なのですが、凄く優秀なお兄さんがいたんです。

 頭が良くて、剣も得意で…、同じ時期に入隊した仲間にも、一目置かれてました。訓練生のリーダーとして、仲間を引っ張って行くような人でした。


 …そう、兄には夢があったんです。

「いつか、僕一人だけでこの国を守れるだけの力が欲しい。そうすれば、他の人達はこの戦いから解放される…と思わない?」

 彼は誰よりも優しい人でした…ちょっと一人で背負っちゃうところもあったんですけど。


 14歳になって聖剣を手に入れてからは、私たちも街の防衛にあたるようになりました。

 私は…能力を買われて前線に出される事が多くて。もちろん自分にそんな役目は大きすぎて…。プレッシャーで声も出せないような状態でした。

 そんな時はいつも、兄は「フローレの役目を果たすだけだよ」と、優しい声を掛けてくれました。そのまま戦場の最前線に駆けていく兄の後ろ姿は良く覚えてます。


 そんなある日、突然、兄が家からいなくなったんです。


 初めは、早めに防衛に行ったのかな…と思いました。でも…戦いが終わっても姿が見えなくて。

 父も必死で探しました。騎士団の仲間にも協力して貰ったのですが…どうやら「この国にはもういない」、そう言われました。

 私がミラディアンに来たのは、兄の手がかりを探すためだったんです。

 あとは皆さんが知っての通り、十三部隊に配属されて、皆さんと出会ったという訳です。


 あれから、未だ何の手がかりも手に入らなくて…。

 心配ではあるのですが、今は任務が大事ですね。

 …もしかしたら、兄もキールに戻ってきてるかもしれないですし!


 …はい、不安です。でも、皆さんと一緒なら、なんとかなると思うんです。

 思い出話に付き合わせてしまってごめんなさい。この任務を、なんとしても遂行しましょう。





「…お、見えてきたぞ。あれがキールの国境か」

 フローレの話を聞いているうちに、空にはうっすらと朝焼けが輝き始めていた。

 その向こうに、石造りの城壁が見えてきた。あれが、キールとミラディアンを隔てる関所である。

「あの向こうが、フローレの言ってたマズリーの町だね」

「はい…。本当に無事なら良いのですが…」


 馬車から降りたミヅキが、門番に確認を取る。

「聖騎士だ。通してくれるか?」

「…聖剣を見せろ」

 彼女は、自分の剣をこれ見よがしに掲げてみせた。「見せる」というより、「見せびらかす」という表現の方が正しいかもしれない。

「これでよいか?」

「…許可する。門が開くまで待ってろ」


 門番が何かの装置をいじると、その大きな木扉が開き始める。

(…今、私の故郷はどうなっているの…?)

 フローレの心には、晴れそうにもない不安の雲がかかっている。


 扉が、開いた。

えー…大変遅くなりまして申し訳ありません…(´;ω;`)

リアルが忙しかったのですよ…

すでにほぼ今の章の見通しは立っていますので、ペースを上げていきたいなーと思う次第です(*'▽')

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