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Black Paladin ~聖騎士団第十三部隊~  作者: Noire
第一章 紅蓮の剣
15/21

紅い誇りと協力者

★ 

…すべてが終わった時、彼はそこに佇んでいた。

(…終わった、のか…?)

 放心状態から立ち直り、すぐに辺りを見回す。

 同胞たちの姿も、すぐ近くにあった。さて、これからどうしていくべきか。


 彼は盗賊だった。

 小さかった頃、彼は名も知らぬ男からすべてを奪われた。家族も、金も、自分の未来さえも。

 それが、彼に歪んだ思想を植え付けたのだろう。いつしか、彼は「最も奪う者が、最も強い者」と思うようになっていた。

 彼は盗んだ。金も、財宝も、誰かの未来でさえも。

 いつしか彼のもとには、彼を慕う仲間が集まり、小さな盗賊団ができた。仲間の大切さを始めて知った彼は、物騒で、そこそこ幸せな生活を送っていた。


 そんな時だった。聖騎士と名乗る男が、彼の仲間の大半を惨殺したのは。

「お前たち、俺に協力しろ」

 そうして、盗賊団「紅い蠍」は、聖騎士団の手先として使われるようになってしまったのである。

 仲間を殺した奴に、従っていられるか。そんな気持ちもあった。仲間も、そう思っていた。しかし、彼は自分の信条に従った。

「奪うものが最も強い」

 それは、彼の人生において「信条」でも、「呪縛」でもあった。


 そして今、戦いは終わった。彼から多くを奪った聖騎士は、破滅したのだ。

(…とりあえず、仲間を呼ぶか)

 仲間は、どれだけ残っているのか。それが気がかりだった。

「紅い蠍、集合!」

「「「はっ!!」」」

 仲間が集まってくる。彼は内心、ほっとしていた。

「死傷者の報告をしろ」

「はい、負傷者12名、死者0名です」

「…死者ゼロ?なぜだ」

「えー、敵ですが、こちらの戦意を奪おうとするばかりで、何故か命までは奪わず…」

「…そうか」

 続いて彼は、明日以降の団の在り方について考えた。

「…報告しろ。奴らは、何を奪っていった?」

「…戦意を奪われました!あの猛攻は…」

「俺は、武器を…あの剣、気に入ってたのに…」

「僕は…恥ずかしながら心を…!」

「「「心…!?」」」

 見れば、そいつは顔を赤くしている。さすがの彼もちょっと引いた。

「ああ…アイリスさんと言うのか…!」

「お頭…こいつどうします?」

「…まあ、放っといてやれ」

 その後も被害報告は続く。

(…甚大だな。しかし…)

 死人がない。それが、彼にとって気になる点だった。人を殺めずに、それだけのものを奪えるだなんて…

 そう考えた時に、もう彼の意思は決まっていたのかもしれない。


「全員よく聞け。これから、俺たちはそいつらの味方につく」

「「…!」」

 驚く彼ら。しかし、拒絶はしていないようだ。

「俺の信条は『より奪う者に従う』だ。あの聖騎士よりか、よほどマシだろ?」

「…ああ、お頭の言うとおりだ!」

「俺も賛成するぞ!」

 笑いあう盗賊たち。

 歓声が、もう廃墟になった屋敷に響き渡った。


「…で、俺らのところに来た、と」

「ああ、エルさん」

 …エルの前に立っているのは、他でもない、先日の盗賊団である。

「…なぜここに来た」

「あんたらは、命を奪わずに、多くのモノを奪っていった。盗賊として、尊敬できると思ってな」

「…盗賊に尊敬されたくないんだが」

 こんな奴らとつるめば、十三部隊の印象は悪くなる一方である。


「…まあ、いいんじゃない?『姿を見せない影の別動隊』なんて、カッコイイじゃん」

 アイリスがフォローを入れる。だが、エルはやはり不安であった。

「お前ら…裏切るんじゃないのか?」

「…さあ、それは分かりませんぜ」

「おいおい」

「俺たちぁ盗賊、日陰で生きている奴らだ。でも、だからこそ出来る事があるんですぜ」

「…まあいいや、裏切ったら叩きのめせば」

「ははは…そりゃあご勘弁…」

 十三部隊に、協力者が現れた。不安もあるが、その事実は、とても喜ばしいことのように思えているエルもそこにいた。




 いかがだろうか。正義や悪って難しいよね。

 でも、彼らは生きてる。自分の正義を守るために。それは正しいかは、分からないかもしれないけど。

 さあ、聖騎士の物語はまだまだ続く。延々と続く戦いを終わらせるために。

 この物語の行方は、僕にもわからないけど…ね。


「Black Paladin ~聖騎士団第十三部隊~」、第一章完結です!

第二章…の前に、ゆるーい幕間のお話を入れたいと思います(*'▽')

次回「眠れない夜にはお茶会を」 ご期待ください!

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