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Black Paladin ~聖騎士団第十三部隊~  作者: Noire
第一章 紅蓮の剣
14/21

戦いの結末

更新が大変遅れて申し訳ありませんm(_ _)m

 ガッ!


 鈍い音が部屋全体に響き渡る。

 遅れて、ドサリという音。

「そんな…エルさん…!いやぁぁぁ!」

 フローレの叫び声も聞こえてきた。


(ああ…俺は、死んだのか…?)

 朦朧とした意識の中、エルはその部屋の音を聞いていた。

 眼は、開かない。身体も石の様に重い。

(そうか…ここで終わりなのか。)


 しかし、エルはもう1つの音が、自分の中に響いている事に気がついた。


 心臓の音。


(…生きてる!? 何で…)

 響く。

 響く。

 また響く。

 その音が、彼の意識を鮮明にさせる。

(俺は…何故生きてる?)

 眼が、開いた。

 腕が動く。

 足も動く。

 立ち上がり、辺りを見回す。


「…嘘だろ、何故…!」

 ガストの姿。動揺している様だ。

「…エルさん…!」

 遠くの方で、心配そうな顔をしていたフローレ。

 そして、自分の身体。全く、どの部位も失っていない。

 (…!? どうなってる…?)

 ふと見ると、エルとガストの間、ちょうど剣が飛んできた場所に、何かが浮かんでいる。それは一瞬の後に地面に落ち、砕けてしまう。

 しかし、エルにはそれに見覚えがあった。


(…魔法結晶化装置…!)


 ずっと、エルのポケットにあった。本人は完全に忘れていたが。

 これが、レーヴァテインの爆炎を無効化したのだろう。杖の打撃分しかダメージを受けていない。


「…ふふっ」

 エルが笑う。優しい笑顔だ。

(助ける…?いや…)

 再び剣を構える彼は、もう吹っ切れたようだった。

(助けられてたのは、俺の方だ)

「まだ…挑んでくるというのか…!?」

「ああ、お前を倒す…!」

 暗黒がエルの足元から溢れ、渦を巻いて行く。

(それに応えるためなら、俺は全力を出せる!)

 強大な力の奔流。まるで、これまでが本気でなかった(てをぬいていた)かのようだ。

「嘘だろ…そんな力が…!」

 本能的な焦りを感じるガスト。こんなことは、今までの人生で一度もなかったのに。

「くそっ…何度でも焼き尽くしてやる…!」

 再び太陽の様な刃を発生させ、斬りかかろうと走り寄る。


 ガキン!

剣と杖がぶつかり合う音。焔と暗黒は拮抗している。

「受け太刀…?もうそんな体力も残ってないだろ…!」

「ああ…全身フラフラさ…」

 エルの方が、徐々に押されている。

 「うあぁぁぁ!」

 ガストが渾身の力を込め、剣を弾き飛ばした。

 後方にふっとばされ、床に投げ出されるエル。

「もう俺は戦えない。俺は…な」


 その時だった。

 つばぜり合いに勝った彼の一瞬の隙。

 それを突いて、後方から剣が放たれたのは。

「ぐぁぁ…!」

 一刺しをまともに食らってしまったガスト。すぐに後ろを振り返ると、そこには。


エルの姿をした、暗黒の人影がいた。


「な…!?」

「…俺が本気を出さない理由、それは…」

 人影たちが、エルの足元から何体も現れる。

「破壊力と与える恐怖が、とんでもないからだよ」

 影が襲いかかってくる。

 ガストは確かに屈強な戦士だ。

 同じく歴戦の勇士であるエルも互角の強さである。

 しかし、そんなガストも、『エル五人分』を相手に勝つことが出来るだろうか?

 その重圧を前に、恐怖を感じないでいられるだろうか?

 答えは、NOだ。


「卑怯だぞ…、こんな力…!」

 影人形たちに襲われながら、ガストが呻く。

「先に奥の手ひけらかした奴が何言ってんだ」

「なんなんだ…なんなんだよ…!」

 容赦のない攻撃。先ほどまでエルを圧倒していたものとは思えない姿は、無様でもあった。

「やめろ…やめろおお!」

 絶叫。

 恐怖に怯え、泣き叫ぶ者の絶叫。

「うわあああ!」


 その瞬間、攻撃が止まった。

 影たちの姿は、その場から跡形もなく消える。

 いつの間にか立ち上がっていたエルが、ガストに向けて叫ぶ。

「もし生き延びたいなら…この場から今すぐ消えろ」

「…くそ…っ!」

 圧倒された挙句、見逃された。そんな、強烈な屈辱に涙しながらも、ガストは逃げるように走り去って行った…


 戦いの全てが終わった。

 エルはフローレの鎖を解く。

「エルさん…すみません…!」

「なにを謝ってるんだよ。悪いのは、全部あの臆病者だ」

 フローレが目に涙を浮かべる。

「いえ、私の為に、エルさんが誰かを殺める事になってしまった事が…!」

「…優しいんだな」

 優しすぎる考えだ。そんな考えでは聖騎士なんてやっていけないだろう。

 そんなこと、誰もが知っている。だが、彼も、その考えに影響されていたのかもしれない。

「安心しろ、誰も殺してない」

「…!?」

 フローレが、じっとエルを見つめている。

「あいつに利用されていた奴らは、絶対に殺さないように…って。あいつ自体も許す事は出来ないが、殺すなんて馬鹿らしいしな」

「…そんな事が、できる人がいるなんて」

「…?」

「私は、騎士さんに憧れていたんです。誰かを守る事ができる、そんな人に」


 彼女が続ける。

「でも、相手を殺すなんて…って思ってしまって。『殺さずに、守る』って、とても難しいのかな…って」

「…かもな」

「でも…エルさんは…、私を守るためにそれを成し遂げてしまった」

 フローレは、少しの間の後、頰を赤らめて言った。

「それってすごく…かっこいいなって」

「…アイリスの次くらいにか?」

「…!そんなんじゃないです…!!」

「ははは…おっと」

 ドサッ。

 エルは強い疲れを感じたのか、その場に座りこんでしまう。

「しまった…無茶したかな」

「…大丈夫ですか?」

「ああ、少し寝ようかな」

「それは…ここで?」

「もうここでいいや」

 そう言うが早いが、すぐにエルは眠ってしまった。


 その寝顔を見ているフローレ。

 自分も誰かを守れるだろうか?そんな事を考えていると、自分も眠くなってきてしまっている。

(エルさん…ありがとうございます)

 彼女は少し微笑んだまま、眠りに落ちて行った。

 天井に空いた穴から、朝日が差し込んでいる。


第一章もあと僅か!最終話は、少し違った視点からのお話になりそうです。

できるだけ早く執筆しますので、期待してくださるとありがたいです(*^^*)

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