魔道の神髄
マーリンさんから
「あのさあ…私は猫型ゴーレムじゃないんだ」
と、忠告を受けたので、かっこよく書いてみました!
屋敷の中を進んでいく四人。
壊してしまった剣を現地調達したエルの目の前に、高位そうな聖騎士が現れた。
「我ら、第5部隊四天王!」
「ここから先、通れると思うなよ…!」
聖剣を構え、立ち塞がる。彼らの目つきは鋭く、殺気を露わにしていた。
しかし、エルはそこを素通りしようとする。
「…!?」
「悪いが、お前らの相手をしている暇は無いんだ。通らせてもらう」
「…な、なんたる屈辱!!」
激昂する四天王たち。
「そんな事をいつまで言えるか試してやろう…!『解放』!」
火の玉が飛ぶ。閃光が走る。聖剣の力というのは凄まじく、まともに喰らえばエルもひとたまりもないだろう。
だがその瞬間だった。放たれた攻撃とエルとの間に、誰かが割り込んだのは。
「マーリン、頼む」
「了解っ!」
間に入ったのはマーリンだった。
「『解放』クリスタル・スタッフ!」
謎の光によって、炎が、雷が、掻き消える。地面に透き通った水晶が転がっていた。
「ここは私に任せて、先に進んでくれ、エル」
頷いたエルが、通路の奥へ消えていく。四天王たちがそれを追おうとするが、彼女がその前に立ちふさがった。
「君たち、この先に行きたいのだろう?通れると思わないで欲しいなぁ」
マーリンはニヤニヤと笑っている。
「おのれ…そこまで我々を侮辱するか」
「ならば思い知らせてやろう、我々の力を!」
すぐに第二撃がきた。しかし、それもまた魔法石に変えられてしまい、マーリンには届かない。
「ほう…聖剣の力は効かないか。ならば…」
「直接貴様を切りつけたら、どうなる!」
彼女の能力を察知するあたり、実戦経験は豊富と言えるだろう。すぐに解放を止め、今度は斬りかかってきた。
マーリンはその剣を杖で受ける。しかし一本の杖で四人の攻撃を受けきれる訳も無く、ついにダメージが通ってしまう。
「ぐっ…!なるほど、結構やるじゃないか君たち」
勢いづく四人。
「だけど、私には勝てない」
不敵に笑い、彼女が懐から取り出したのは、大量の魔法石。
呪文を唱える。そして。
『偉大なる混沌よ、我が命に従い、その門を開け!』
地面に展開された魔法陣より、異形の者が姿を現した!
「な…魔物を召喚した!?」
ゆうに人間三人分の大きさはあるであろう異形が、腕をぶん回し暴れまわる。当然、壁は破れ、彼らは成すすべもなく吹き飛ばされて行く。
魔法石は、魔法道具を作るためだけにある訳ではない。その中には魔力が凝縮されている。使いようによっては、さきほどのように、大魔法を行使する助けにもなるのだ。
「つまり魔法とは応用力さ」は、彼女の談である。
「ググ…ゴォォォォッ!」
雄叫びをあげる怪物。
異形には、普通の武器は通用しなかった。
聖剣を解放し、立ち向かって行く聖騎士たち。しかし、その力はマーリンによって掻き消されてしまう。
「なんなんだ、一体…!」
打つ手がない。全ての行動が、無駄になる。
絶望。
四天王たちの前にあるのは、絶対的な絶望だった。
「言ったろう?君達では、私に勝てないんだよ…」
マーリンが笑う。その言葉は、彼らの心を砕くのには十分だった。
「こいつ、思い出したぞ…聖騎士で有りながら、魔導に堕ちた魔女、《マーリン・"アルマ"・ウイッチクラフト》だ…!」
その名前を聞いただけで、多くの聖騎士が震え上がる。
「う…うわぁぁぁぁ!!」
叫び出しその場に泣き崩れる者もいた。
「ご名答〜。だけど、そのミドルネームは捨てたんだけどなぁ」
「き、騎士団を追放されたお前が、何故十三部隊にいるのだ…!」
「…拾う神が、いたのさ」
彼女が懐かしそうな顔をする。
「さあ、そろそろ諦めてもらおうか!」
マーリンが手を振り下ろす。異形の鉤爪が、彼らの鎧を引き裂いた。
膝をつき、完全に戦う気力を失った彼ら。
マーリンが通路、エルの向かって行った方向を向く。
「エル、頑張ってくれよ。もう後悔しない様に…な」
そう呟いた表情は、どこか切なげであった。
いかがでしたでしょうか?
次回よりついに、エルと第五部隊長、ガストとの戦いが始まりますよー(*'▽')




