騎士団議会
ミラディアンの王都、シュワイゼンは、国の中央に位置する大都市だ。魔物の侵入を防ぐため、他の都市とは転移魔法具によってのみ結ばれている。
活気の溢れる街、健康的な住民…。エルたちの住まう南街と比べれば、ここの素晴らしさはすぐにわかるだろう。
また、ここは上位三部隊の本拠地でもあり、住民たちの信頼と尊敬を得ている。…十三部隊とは大違いだ。
王都の中心、シュワイズ王城を歩くエル。定期的に行われる騎士団議会に出席するため、この場に赴いたのである。
「おい…アイツって…」
「異端児…」
「悪魔の子って噂だぞ…?」
聖騎士とすれ違うたび、心無い陰口が聞こえる。どれだけこれが彼の心に刺さった事か。
(そんなのは…もう慣れたけどな)
大広間の扉を開き、議会に入場する。すでに半数以上の隊長が集結しているようだ。
椅子に腰かけると、そのほぼ全員が彼のほうを見た。
「…何だよ」
「いいや、何でもないよ十三隊長」
「………」
どこか軽蔑したような目をしているのは、第三隊の隊長。それをエルは睨みつける。
「…そんな怖い顔をしないでくれよ。我々は仲間だろう」
「先に挑発したのは、どっちだ…」
「おっと…、やるのかね?」
火花を散らす両者。そこに、ミズキが割って入る。
「二人とも、やめよ。ここは決闘場ではないぞ!」
「「………」」
ちっ、と舌打ちをして、相手方がエルから目を逸らした。
ミズキがエルに目配せする。
(気にするでない。いつものことじゃ)
(ああ…ありがとよ)
「「「騎士王殿下、入場!!」」」
暫くして、この国の騎士王、ロマノフ・A・アルフレッドが姿を現す。
「やぁ…久しいな、勇敢なる騎士たちよ」
尊大そうな態度で、円卓の真ん中に着席した。
議会が始まる。
「本日の議題は、迫る魔物たちへの対策、そして軍備の拡張についてだ」
騎士団議会は、騎士王を中心に各部隊の隊長十三人で構成された会議だ。主にそこでは、国の政策や防衛について話し合われるのだが…
「王よ!これ以上の増強は必要ないのでは…?」
「…俺は賛成だ。この間俺の守る北街に怪物が侵入してきた」
「僕もだ。王都の連中と装備が違い過ぎる…!」
「…そうか。では、第七と第十一部隊の装備を特に増強、それで良いな…?」
「「感謝します、騎士王殿下」」
「……」
恐るべき点は、ほとんどの部隊、いや、ほとんどの聖騎士が騎士王に賛同している事。軍備拡張に反対する、エル達のような者の意見など通らないのである。
そして、それは同時に、騎士王の権限は絶対であることを示す。ほぼ独裁政治と変わらないのだ。
「それでは、議決を取る。賛同者は挙手せよ」
ほぼ全員が挙手をする。決定だ。
「…おや?第五部隊長の姿が無い様だが…?」
騎士王が問う。見れば、その席は空席となっている。
そして、その時だった。
…傷だらけの騎士が、議会に飛び込んできたのは。
「申し上げます…!賊たちが、南街に火を放ち暴動を起こしました!」
「…何だと?現在の状況はどうなっている」
「我ら第十部隊が鎮圧致しましたが…被害は甚大です。死傷者も多く…」
その被害の割に、何の兆しも無かったとその兵士は語った。
「分かった。南街担当の部隊長はすぐに戻り、現場の状況を確認せよ。治療班をもつ部隊は、それを派遣し給え」
「御意」
「議会は中断とする。行け!」
予知しようがなかった事件。しかし、エルは(まさか…)と思う事があった。
街に着くなり、彼は全力で走った。破壊された市街、混乱する民衆をかき分けながら。
「あ…エルさん!」
十三部隊の宿舎もほぼ全壊している。アルバートがこちらに気づき、呼びかけていた。
「大丈夫か?みんな怪我は…」
「そんな事気にしてる場合じゃないよっ」
アイリスが涙目になって訴えかける。
「フローレちゃんが…攫われた!」
言って、その場に泣き崩れる彼女。そこにエルは声を掛けた。
「大丈夫だ。もし攫うなら、人質としてだろう。すぐには殺されないはずだ」
「で、でも…奴らが今何処にいるか、分からないんだよ!?」
「大丈夫だ、絶対に見つけ出す」
エルは真剣な表情で、二人に言う。
「みんな、心して聞いてくれ。今回の事件の裏にいるのは恐らく…」
「…恐らく?」
それは、あの時マーリンに聞いた名前。
「聖騎士だ。第五部隊の隊長、ガスト・ガーフェイントだ」
最近はスマホのメモ帳で小説を書いています。
でもそれをPCに転送するのが難しいんですよね…
コピペしてメールに貼り付けて、そのメールをPCで受け取ってコピペして…
大変です(´;ω;`)
(2017/08/08 改修)
改行の修正…、あと、指摘のあった点を少しだけ加筆しました!
いつもありがたい感想ありがとうございます(*'▽')




