凶悪犯罪対策課 第二十三支部 第一男の娘小隊
「ここですか……」
「ああ。間違えない」
──古びた廃ビルに二人の少女が立っていた。
一人は黒髪を一つに結んだ、つり目で男勝りな雰囲気を醸し出している少女。
もう一人は自分だからよく分からないが、たれ目で白く脱色したショートカットで、周りからはよくぼんやりしていると言われる。
二人ともコスプレ会場にいる軍服を女物に改造した様な服装をしていた。
凶悪犯罪対策課 第二十三支部 第一男の娘小隊。
その隊長、副隊長がぼく達である。
隊長曰くここに凶悪犯罪の犯人が立て籠っているらしい。
「犯罪の臭いがぷんぷんするじゃあないか」
「どうします?」
「勿論とつにゅ──」
隊長が勢いよく突入の宣言をしようとした瞬間、この場の雰囲気にはそぐわない気の抜けた電子音が辺りに響き渡った。
「む、本部からだな」
部長はポケットから携帯を取りだし、通話ボタンを押す。
「はい、こちら二十三支部、第一男の娘小隊」
電話に出たときはきりっとしていた表情が、みるみるうちに崩れていく。
「…………え、今○○市にある廃ビルに来ているのですが……」
隊長の顔は今にも泣きそうだ。
「…………あ、はいそうですか……わかりました。お疲れ様です。失礼します」
隊長は物凄く落ち込んだような顔をしながら携帯を閉じた。
「…………どうやら犯人が捕まったらしい」
「え? だって犯人はここにいるって……」
「…………ここ、最初に調べて白だったらしい」
「…………はぁ」
……確かにそれは落ち込む。
二人は微妙な雰囲気に押し黙ってしまう。
遠くから車のエンジン音が聞こえてくる。
……ぼくはついに堪えれなくなって部長に問いかけた。
「こ、これからどうします?」
「………………折角来たんだ。突入しよう」
「はぁ、ぼくは貴方の指示に従いますが…………」
「じゃあ──」
部長はさっきまでの雰囲気を無理矢理吹き飛ばすように叫んだ。
「──突入っ!」
先頭の隊長が壁に寄りかかり、ぼくが扉を蹴り破る。
すぐに拳銃を空間に向けるが……誰もいない。
「くそっ! 犯人はどこだっ!」
「もういませんって!」
ぼく達はそのまま階段を警戒しながら登る。
──するとまたドアがあった。
今度はぼくが壁に寄りかかり、隊長が蹴破る。
入った瞬間、発砲音が鳴り響いた。
………………どうやら隊長が撃ったらしい。
「どうしたのですかッ!」
「ま、」
「ま?」
「ま、間違えて、人形を撃ってしまった…………」
か、かわいい……
「隊長らしいので許します」
「よしっ! 次いくぞ!」
隊長はすぐに調子を戻して進んでいった。
「次は最上階だ──追い詰めたぞ! 犯人っ!」
「もうその犯人は、務所に入ってるんじゃないですかね?」
先と同じようにドアを蹴破り、最後の部屋に入る。
入った瞬間、隊長は何を思ったのか狙いを定めず乱射をし始めた。
「ここに居るのは分かってるんだ! 早く当たって死にやがれっ!」
許可なく撃った拳銃についての反省文、ぼくが全部書くんだけどな…………
返り玉が当たる危険性がある場所だが、思わず遠い目をしてしまうのは仕方がないと思う。
────だから気付かなかった。前に進みながら乱射していた隊長が立ち止まった事に。
「わっ!!」
ぼくは隊長の足に躓き、転んでしまった。
──やばッ!
ぼくはつい反射的に隊長の脇腹を掴んでしまう。
「きゃっっ!!」
あ、隊長はわき腹が一番弱いんだった──。
そう思う隙もなく、ぼく達は鈍い音を立てて倒れる。
「イテテ……」
ん? 真っ暗?
顔をあげて状況を把握しようとしたが、何故か真っ暗で何も見えなかった。
「んっ、ひやっ、にゃあっ、はにゃあぁあっ! はにゃくっ、わきっ……から手を離せ………っ!」
「あっ…………す、すみませんっ! 隊長!」
どうやらぼくはスカートに頭を突っ込んで、脇腹を掴んでいたようだ。
ぼくはどうにか早くスカートから脱出しようとして、つい脇腹を思いっきりグニッと押してしまう。
「にゃあああああああぁッッ!!!」
「す、すみませんっっ!」
「うう、あほうっ!」
隊長はスカートが身体から脱げるのも気にせず、勢いよく立ち上がり、思いっきりぼくのお腹を蹴ってきた。
────ぼくは吹っ飛ばされながら、顔をリンゴみたいに紅くしている隊長をみて思った。
やっぱり隊長かわいいっ!
完全に暴走しましたね……
これどうなんでしょうか?