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Dark moon  作者: chocolatier
夜の世界
8/48

翌日、朝。


紺はセミダブルのベッドで目を覚ます。

月島と共に今の家に引っ越した時に買ったベッド。寝室の割に小さい寝床。ひっついて寝たい、そんな紺のわがままに月島が折れて買った。思い出の揺りかご。寝心地は最高。

それに…目覚めれば隣には愛しい人。快晴。良い朝。

月島に頬を摺り寄せて、幸せ過ぎて涙がこぼれそう。


「好き」

「朝から、良い事を聞いた」

「紫、起きてたの!?」


反転する視界。

映し出される、月島のまだ眠気の残る顔。


「おはよう、紺」


小さく唇を合わせる。

シーツの海の中で2人笑いだす。


紺の指先に、月島の胸にある一文字の古傷が触れる。

月島の掌に、やわらかい紺の真白な素肌が包まれる。


暖かい。

この時間は、永遠ではない。

知っているから、狂おしいほど愛おしい。


そして。


「紫、今日…」

「知っている」


もう一度唇を啄んで、月島は紺の黒髪を梳く。寝癖も無い直ぐな髪。両頬の横だけ顎のラインで揃えた所謂お姫様カット。古風な髪型が似合う。


「今日は満月だ」


二つの黒曜石の瞳。

ちょこん、と乗った鼻。

小さい癖に良く動いて表情を作る唇。

二本の手、二本の脚、華奢な体躯。


どこから見ても紺は普通の女性だ。


それでも彼女は人間ではない。満月の夜は、それを嫌というほど突きつける。


「ごめんね…」

「謝るな」


もう一つだけ口づける。今度は少し長く。彼女の謝罪を口移しで飲み込むように。


「さぁ、起きないと遅刻だ」

「きゃ、本当!」

「朝食は私が作る。紺は、コーヒーを頼む」


紺曰く『沼のよう』、小野寺曰く『フツーの人間が飲んだら胃に穴が開く』。

月島はそんな濃いコーヒーを好んで飲む。理由は単純明快で甘味が嫌いだからだ。

紺はそんな月島の好みを知って、健気に濃いコーヒーを淹れてくれる。おかげで、月島は半ばカフェイン中毒だ。


「すぐ用意するね!!」


冗談めかして敬礼の真似事。

二人して笑って、紺は脱ぎ散らかした寝間着をかき集めて駆け出す。

紺の後ろ姿に笑みを浮かべながら、月島も手早く身支度を始めた。


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