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Dark moon  作者: chocolatier
夜の世界
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「月が綺麗だ」


ビル風に月島の髪が舞い踊る。

その目線の先には赤々とした月が静かに浮かんでいる。

高い建物の上は月がよく見える。都会のツギハギの空ではない、もっと自由な本来の空。その支配者のように輝く惑星。見惚れていると耳に付けたインカムからだみ声が飛び出す。


『余所見してしくじるなよ!!』

「うるさい、桑野。私の腕は知っているだろう」

『万が一でも撃たれるのは勘弁だ!!』

「安心しろ、味方を撃つようなヘマはしない」


すでにセットを済ませたライフルのスコープを覗く。

先ほど桑野、小野寺、他2名が到着した倉庫街が見える。援護を承った月島だけ、別動隊としてこのビルの上にいるのだ。


『そろそろ、か』

「ああ」


一瞬、風が凪ぐ。


その直後、遥か下の倉庫街。突入。それが狭いスコープの中で展開される。


『作業を止めて手を挙げろ!!!!』


扉をこじ開けた桑野が叫ぶ。さすがは元警官。明瞭快活、聞き取りやすく、実にいい。


『小野寺、この商品、一応確認取れ』

『ほいよ…んー、この試薬の色は…やっぱり禁止薬物だねぇ』


サラサラとした粉末に、小野寺は頷く。

桑野はその間にもう銃を抜いていた。


『月島』

殲滅せんめつだな」


答えるとスコープの中で皺くちゃスーツの桑野が笑った。

あとは鉛玉の阿鼻叫喚地獄絵図。動く者は片端からライフルでサヨナラ。

動くことさえ忘れた者は桑野や他の隊員が一人残らず撃ち殺す。


『た、助けてくれ!!!』

『あんたら、いったいなんなんだ!!』


インカム越しに聞こえる悲鳴。


それを聞きたいのはこちらの方だ。

この組織には名前なんて洒落たモノは無い。

政府の影、もう一つの警察、闇の出来事を闇に葬る存在。


通称≪裏警察≫。国家の非公式公認組織。


いざという時切り捨てられる為に飼われている哀しい人間の掃溜め。


『まぁ、こんなヤクに手出したこと、あの世で反省しろ』


桑野がトリガーを引く。


『さて、後は処理隊の仕事だね』


小野寺がスコープの範囲外からふらり、と現れ、笑う。


手に握ったメスが切り裂く危険薬物の袋。

それを横目にタバコをふかす桑野。

作業を終えた小野寺はそんな桑野から吸い殻を奪って先ほどまでいた倉庫に投げつけた。


空気を揺らす、轟音。闇夜を引き裂く紅い炎。昇る黒煙。

倉庫に蔓延した粒子の細かい薬に着火した、粉塵爆発。


『証拠もクスリも隠滅!!処理隊のお仕事完了!!』


小野寺は寸分違わずこちらに向いてダブルピースを送ってくる。


『消防連絡したから、ややこしくなる前に帰るぞ!』


叫ぶ桑野に了解、と返してインカムを切り、月島は帰り支度を始めた。


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