表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dark moon  作者: chocolatier
変わりゆく世界
44/48

痛い。もう、何処が痛いかもよく分からない。それくらい殴られた。

屹度、自分はこのまま死ぬのだろう。ラルムは霞む意識の中で思った。

けれど。理解しても、自分を変える気にはなれない。


神よ。本当にいるなら、救って欲しい人が沢山います。

神を信じる事も出来ない地獄にいる人が大勢います。


そんな事に目も向けない神ならいらない。

これは、戦争だ。たった一人。何も出来ない自分の意地を通す為。≪裏警察≫の一員として、胸を張っている為。この命が尽きても、此奴らに屈しない。

もし、此処で膝を折って、この神に許しを乞えば、自分を喪ってしまう。誇れる物も無い屍になってしまう。


だから。だから。ラルムは歯を食い縛って、立ち上がる。


小野寺先生。助けて貰ったのに、ごめんなさい。

真田さん。いつも穏やかに微笑んでいる姿、憧れました。

桑野さん。父のように慕っていると、いつか貴方に伝えたかった。

紺さん。優しくて真っ直ぐで、月島さんとの会話は理想の夫婦でした。

月島さん。寡黙で、でも、いつもその背で道を示してくれて…ありがとうございます。


それから……ああ。紗音。ごめん、ごめんね紗音。置いていきたくなんかない。帰りたい。


でも、多分もう駄目だ。


せめて、最後の瞬間まで、睨みつけてやる。

黒く冷たい銃口が、額に押し付けられた。それでも怯まず、ラルムは確りと立って黒い影に焦点を合わせる。


「モウ一度聞ク。改心シテ、コノ捜査カラ手ヲ引ク意思ハ有ルカ?」

「もう一度言う。僕は、お前たちの神を否定する」


引き金に指が掛かるのが、やけにゆっくり見えた。


これが走馬灯だろうか?紗音の顔ばかり頭に浮かぶ。

もう一回、あの凸凹の林檎、食べたかったなぁ、なんて。


ごめんね、紗音。

離れないって約束したのに。

ごめんね……愛してるよ。


ラルムは誇らしげに微笑んで、真っ直ぐに引き金を見つめる。


乾いた、破裂音。

それが、ラルムの最期だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ