神
眩しい。
そう感じで目を覚ました途端、ラルムは目を焼くような痛みを感じた。目の前に、強烈な光源があるらしい。目を眇めて、冷静になれ、と自分に言い聞かせる。
ここは、どこだ?考えるが分らない。では、ここに来る前は何処にいた?家だ。紗音と、過ごした。
それから?
家を出て、職場に向かったはずだ。
いや、待て。途中で誰かに声をかけられて、振り向いた。
そして…気づいたら、ここにいた。
「目ガ覚メタカ?」
機械で変えているのだろう。酷く不快な声がラルムに問いかける。
「誰だ?」
「我々ハ我々ノ神二忠誠ヲ尽クス者」
なんとなく、予感はあった。当たって欲しくないと思っていた。けれど、当たってしまった。
「デパートのテロはお前たちか」
光源の向こうで、影が揺れた。笑っているように。
「アノ爆発ハ、聖ナル生贄。
神ノ国二人ガ近ヅク素晴ラシキ儀式」
「……あれを、お前たちの神は喜んでいるのか?」
影が、1つ頷いた。
その姿に、ラルムの中で、何かが爆ぜた。
「僕は、貴方の神を神とは認めない」
あの爆発で、一体何人の人生が狂っただろう?
重症を負った人間は、障がいが残るかもしれない。人相の変わる人もいるだろう。
何より、大切な人を失った人達は?
声も視力も失った、あの神父の姿を思い出す。
死んだ子供たちを呼び続けた、あの人は、これから生きていけるのか?
「貴方の神は許せない」
小野寺。
桑野。
真田。
月島。
紺。
ラルムは皆を見てきた。
決して神に愛されなくても、誰かの為に歯を食い縛っている姿を。それでも報われないのに、暖かく微笑む顔を。
だから。だからこそ言える。
信仰は自由だ。何を信じても良い。何を支えにしても良い。
でも、それに人を巻き込み事は違うのだ。
「僕は、貴方の神を……信じない」
ラルムは影を睨んで、きっぱりと言い放った。




