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Dark moon  作者: chocolatier
変わりゆく世界
38/48

「小野寺先生!」

「来た!?」


ラルムの声に小野寺が振り返る。

後ろに見える救急隊に、ほんの少し、紫髪の下の口元が緩む。


直ぐに、患者の搬送が開始される。

手元の患者の治療を進める小野寺に代わって、真田が逐一、患者の容態、緊急度を救急隊員に伝えていく。


救急隊の人数も、《裏警察》の人手も、足りない。


「真田さん、軽傷者テントから誰か呼びますか!?」

「そうですね……無線で紺さんを呼んでください!」


ラルムは頷いて、大きめのトランシーバーに齧り付く。

使い方なぞ、悠長に聞いている場合ではない。

何度目かに押した釦で無事紺に通じた。


「重傷者テントに応援願います!」


叫ぶように伝える。

待っている間も、呆けている暇はない。重傷者の探索に使っていたシーツも、担架の代わりになる。物資の奥から引っ張り出して、清潔な場所に運ぶ。


そうしている内に、長い髪を高い位置で結い上げた紺が、瓦礫をかき分けるようにこちらに走ってきた。


「小野寺先生の補佐で良いですか!?」

「お願いします!」


救急隊との連絡を終えた真田が短く答える。

それを聞いて、紺は小野寺の傍に寄って、患部の状態、処置の程度を書き留めていく。


ラルムも、搬送待ちの患者をシーツへ移す作業に積極的に参加する。


いつの間にか、青かった空は橙に染まって、日の入りが近い。


救助作業に光源が足りず、投光器が運び込まれる。救急隊が増える。物資が届く。

逆に、消火活動を終えたのか、消防隊は去っていった。


人の動きが再び活発になる。


バラバラと大きな音。ラルムが驚いて空を仰ぐと、ヘリコプターが飛んでいた。


「糞、マスコミがもう来やがった」


救急隊と何度も往復を繰り返していた桑野が小さく舌打ちをする。


あくまで〈裏警察〉は裏の存在だ。表のマスコミなんかに出て良い物ではない。


「一通り確認したが、もう私達に処置できる重傷者はいない」


瓦礫の向こうから、月島が帰ってきた。


ほとんど同時に、全ての処置を終えた小野寺の手が止まる。


それは、とても、不自然な…硬直したような姿で。


「まずい!」


真田が声を上げて、小野寺の背後へと駆け出した。








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