表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dark moon  作者: chocolatier
変わりゆく世界
37/48

月島とラルムが見つけた男は、小野寺の手で気管熱傷と頭部の三度熱傷と診断された。彼は、今後愛する者も、瞳の光りも、声も失くして生きていくのだ。


彼を助けて良かったのだろうか?


一瞬頭に浮かんだ疑問を振り払うように、ラルムは大きく(かぶり)を振って、自らの頬を両手で挟むように打つ。今は、こんな事を考えている場合ではない。


「やってるか?」


ふらり、とやってきたのは、桑野と真田だった。

軽症者救護テントで足りなくなった物資の補給と、数分以内には救急隊が到着する、との報告らしい。


真田が小野寺と細かい話をする間に、桑野が物資を持って、ラルムの横の瓦礫に腰かけた。


「大丈夫ですか、桑野さん?」


彼は、何処か、とても疲れたような、哀しそうな顔をしているように見えた。


「さっき、妊婦の遺体に縋って旦那が泣いてたんだよ」


いつまで経っても、ああいうのは、見るだけで痛い。そう零して、ぐい、と目頭を押さえて俯く桑野。ラルムは、彼の部屋にあった写真を思い出す。屹度、あれが…桑野の奥さんだった人なのだろう。


≪裏警察≫の面々は、色々な過去を持って、こんな処にやってきた。

まだ生乾きの傷痕に、こんな現場は突き刺さるように痛むだろう。それでも、彼らは怯む事無く、誰かの為に立ち続けるのだ。


「参ってる場合じゃねぇなぁ」


一つ体を伸ばして、桑野は立ち上がる。相変わらず皺だらけのスーツが少し恰好良い。


「ラルム、救急隊の誘導、手伝ってくれるか?」


問われて、重傷者捜索を指揮する月島に確認を取る。

「救急隊が来るなら捜索も捗る」、と彼はすぐに許可をくれた。


元々デパートの駐車場に使われていた場所は損傷が少ないらしく、救急車はそこに駐車する事になった。桑野の後を追う様に、瓦礫の上を走る。角を曲がって近づいてくる救急車のサイレンに、こんなに安心したのは初めてだ。思わず、ラルムの歩調も速くなる。


停車した白い車から、真っ白いヘルメットの隊員達が、ネットのような搬送器具を携えて飛び出してきた。足場が悪くてストレッチャーが使えないせいだろう。


「怪我人は!?」

「こっちです!」


次の救急隊を案内する為、駐車場に残った桑野に背を向け、ラルムは瓦礫の中を走った。

早く。一刻も早く。小野寺と重傷者の待つテントへ救急隊員を導くために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ