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Dark moon  作者: chocolatier
変わりゆく世界
32/48

「はい、止め!」


短く、小野寺が声を上げる。その言葉で、首元の手が引かれ、怒涛の如く気管に空気が流れ込む。思わず、ラルムは荒く咳込んで床の上で丸まった。


「およ、大丈夫?」

「心配ない。急所は外した」

「月島が言うなら、問題無いかな?」


いやいやいや、死ぬかと思った。ラルムが気持ちを込めて首を左右に振っても、月島も小野寺も軽く笑うだけだ。

紗音と関わり、紗音を愛し、紗音に愛され。

ラルムは少しずつだが変わった。精神的に、強くなった。そして、彼女を守ろうと足掻いている。


今も、小野寺を審判代わりに、裏警察地下二階の訓練施設にて、月島から体術を学んでいる最中だ。

元々インドア派で腕力には自信なんて欠片も無い。それを裏打ちするみたいに、投げられ、組み伏せられ、締め落とされる毎日。それでも、ラルムは少しずつ成長して、音を上げずに噛り付く。


「どう?」


水飲み休憩に行ったラルムの遠い背を見ながら、小野寺は、問う。


「正直、実戦部隊の才能は無い」


しれ、と返す月島に小野寺は肩を震わせて笑い声を噛み殺す。


「ラルム君には悪いけど…期待はしちゃいないよ」

「だな」


月島も喉をくつくつ震わせて笑う。


「だが…良い目をしている」

「そうだねぇ…来た時とは大違いだよ」


小野寺の視線に、月島は口角を下げる。


「私も変わったと言いたいのか?」

「別にぃ」


小野寺が、今度は声を殺さずケラケラ噴き出す。

そんな二人の元に、ラルムが走って戻ってきた。


「お待たせしました!」

「もう一本、やるか?」

「お願いします!」


頭を下げる彼に、月島が緩く笑んで一歩踏み出した――その時だった。

脳髄を叩くようなけたたましいサイレンが鳴り響く。


「な、何事です!?」

「緊急警報だ!」


月島が振り返った時には、小野寺は内線に噛り付いていた。通話の相手は桑野だろう。

何度か頷く。その度、小野寺の顔が暗く沈んでいった。


「……月島、【ガス爆発】だって……バイク頼める?」

「ああ、任せろ!」


事態が読めず目を白黒させるラルムに、月島は短く言い放つ。


「テロが起きた」



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