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Dark moon  作者: chocolatier
馴染んだ世界と迷い猫
23/48

「よく寝てるねぇ」

「疲れていたんでしょうね」


ラルムは己の膝に目を落とす。今少女は、ラルムの膝を枕に、穏やかな寝息を立てている。

小野寺から幾つか検査を受けている間も、彼の隣を離れようとしなかった少女。その姿を慈しむように、ラルムはゆったりと彼女の髪を梳く。


「小野寺先生…」

「面倒、みたげるの?」

「…可能ですか?」

「ラルム君によく懐いてるしねぇ」


桑野に相談してからね?と小野寺は小さく微笑む。

その言葉にラルムはほっと、息をつく。


「…なんだか、他人と思えなくて…この子のこと…」

「なにか、あったの?」


首を傾げる小野寺。ラルムは、少し迷って口を開く。


「僕、弟がいたんです。母が再婚して出来た子だから、父親は違うんですけど。

とっても可愛い奴で…生きていたら、この子くらいなんです」

「……亡くなったの?」

「行方不明です」


小野寺が息を飲む音が聞こえた。


「僕が18の時に、事故で両親が死んで。

それからは、親代わりもしてたんです。でも、僕が仕事で遅くなって塾まで迎えに行ってやれなかったから…」


あの日の事は忘れない。屹度。絶対に。一生、忘れられる訳がない。

ぽん、と小野寺の手が、肩に乗せられる。


「携帯の留守電に…助けてって。だから、僕はハッカーになったんです」


どんな形でも、弟が生きているのなら助けてやりたくて。


「そうだったんだね」


肩に乗ったままだった小野寺の手が、ラルム背に回って優しく撫でる。


「苦労したねぇ」

「はは、すいません、急に…こんな話…」

「大丈夫だよ」


同情でもない。激励でもない。

ただ優しく背をあやす手が優しくて。幼い日、母が傷口を撫でて『痛いの痛いの飛んでけ!』なんて、呪文を唱えてくれた。あの暖かさを思い出す。


「およ!?」


零れていく雫を、小野寺がハンカチで拭う。それが眼尻に触れた時、ラルムは、やっと今自分が泣いているのだと気づいた。


「…あ、れ?変…だな?」

「……ラルム君。ここの子たちは、みぃんな訳ありだから。泣いて良いんだよ」


包み込むような小野寺の声に、心が軽くなったみたいで。

笑って返したけれど。それは、情けない泣き笑いにしか、ならなかった。


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