表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dark moon  作者: chocolatier
裏警察へようこそ
18/48

小野寺と桑野が内線で二言三言会話した結果、試験は明日と決まったらしい。


「今日は、ラルム君も疲れたモンねぇ」


エレベーターで小野寺はくすくす笑う。

人間の適応力は恐ろしい。もうこの派手な髪色に慣れ始めていた。


「あ。それとね」


地下1階から21階まで、長い道のりの中で小野寺がラルムを見上げる。


「もう一人帰ってきてるの、談話室に」

「そうなんですか?」

「でも、驚かないであげてね」


謎の言葉に、ラルムは首を傾げる。エレベーターが到着を告げた。なんだか懐かしい談話室の光景。そこに、彼にとっては、見覚えの無い人影があった。


銀色に輝く長い髪。黄金色の瞳。

細身の少女が、月島の腕に甘えるように身を預けていた。幸せなのか三角形のとんがり耳はへちゃんと垂れ、時々、髪と同じ色の尻尾がふりふりと動いている。


「…え?」


ラルムは思わず、目を擦る。見間違いか?疲れているのか?

しかし、何度見直しても、確かに少女の体に犬のような耳とふわふわ尻尾がついているのだ。


「な、何!?」

「おい、小野寺ちゃんと説明しろって言っただろ!?」


固まるラルムの姿に桑野が頭を抱える。


「驚かないでって秀サマ言ったよ?」


小野寺は首を傾げてみせる。そんな遣り取りに苦笑しながら


「大丈夫です、驚いて当たり前ですから」


そう言って少女が身を起こした。


「はじめまして、ラルムさん!星野紺です!」


笑った彼女の唇の端から、犬歯が覗く。


「彼女は私の恋人だ。見ての通り…人間ではない」


その華奢な肩を抱いて離さないまま、月島はラルムを見やる。


狼憑(おおかみつ)き…人狼の一種だ」

「今日は満月なので、御見苦しくてすいません。明日には人間の見た目に戻るので」


紺は礼儀正しく頭を下げる。

ラルムはその姿を呆然と、ただ見つめる。


それを目に、桑野が「よっしゃ!今日はラルムの歓迎会するか!」なんて言い出して。小野寺は大喜びで大賛成。小躍りする上司二人に「仕方ない」と肩を竦めて場所提供を申し出て。ここまでくれば、月島と紺も喜々として参加を表明する。

歓迎される当人抜きで、話がどんどん進んでいく。

そんな様子を未だ遠い目で見つめたまま、ラルムはぼんやりと思った。


――天国のお父さん、お母さん。僕はなんだかとんでもない処に就職するみたいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ