屋台でバーボンを飲む男
「やっぱり豚肉が一番だな」
「いや牛肉だろ安価だし」
「馬刺しの良さがわからないのかお前らはまったく」
こんな会話が夜の屋台で繰り広げられているのを聞きながら、男は笑いを堪え、バーボンを傾けていた。
「マスター、焼き鳥一つ」
「へい」
――こいつらは何もわかっていない。
この世に出回っている肉はすべて、人肉だということが。
高度に情報統制され、豚や牛を大量生産しているように見せかけられているが、実は人間の腹を満たせるほど生産はされていないのだ。
過去の人間たちは気づいた。
豚や牛の肉の味など、人肉の味に比べれば草同然だということに。
倫理的な問題があるので伏せられているが、食用に人間の遺伝子を改造し、鳥や豚に形だけ似せて販売されているのだ。
男はそんなことを考えながら焼き鳥を齧る。
ところで男がなぜそんな裏の情報を知っているかというと、全て男の妄想だからである。
「美味い」
夜は更けていった。