雑談のお時間です「虫の見る先」
「時に、虫は好きか」
また、なんの前触れも無く話が飛んだ。よくある事なのでそれに疑問も持つこと無く話を進める事にする。
「好きか嫌いかで言えば好きですよ。カミキリムシのフォルムは今でも格好いいと思いますし、カブトムシを飼ってた事もあります。男の子ならそんなものだと思います。けど女性は嫌いな人が多いんじゃないですか」
師匠はどうなんですかという感じに回答してみた。きっと興味があるからこんな話をしてきたのだろう。
「私は彼らが宇宙に出るつもりじゃないかと思っている」
好き嫌いの話ではなかったのか、相変わらず自由に話を進める人だ。
「何故そう思うんですか、直接聞きでもしたんです」
「いや、そんな貴重な体験はしてないよ。宇宙船や宇宙服を見るとどうも虫の様に見えてしまう、関節部分なんかは特にだ。それで私は思うんだよ、地球の環境破壊がずっと進むと虫達は宇宙に逃げれる様に進化する。そして新たな星に向かうのだろうと」
なんともSFチックな話だ、だが嫌いじゃない。
「確かに虫は宇宙人なのではないかって話もありますし、そうなる未来もあるかもしれませんね」
「いや、虫は地球産まれだろう」
「なぜそう思うんです」
「宇宙から来た様な不思議生物なら、さっさと侵略して哺乳類なんかはいないんじゃないか」
そうなのか、そうなのだろうか。確かに一理ありそうな話だが反論の余地が多々あった。
「宇宙から来てみたら自分の数十倍も大きな生物がいたから侵略出来なかった。侵略は出来たが餌として残しておく方が合理的だった。未だ、侵略の途中である。どれがいいですか」
「好みなのは2番目だな。3番目は今後に期待だ」
その後も蜘蛛の糸の強度や蟻の集団としての役割などダラダラとくだらない虫談義は続き、出し抜けに聞いてみた。
「で、結局。虫が好きなんですか」
そうすると師匠は何を言っているんだと言わんばかりの表情で私を見る。
「あんな気持ちの悪い物、好きなわけがないだろう。好きだと言うヤツの気がしれない」
そう言って、クマムシの干眠は宇宙でのコールドスリープの為ではないかという話を続けた。ああそうだ、こういう人だ。私はとある所では虫の幼虫やミミズが最高のご馳走だという話はしないでおいた。明日にでもそれらが並べられたテーブルが想像できる。
後日、イナゴの唐揚げを大量に作らされる事に、この時の私は知らないでいた