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第1章 8
二週間ほど前か。いつも通り二人で駅に向かって歩いていた。店と駅のちょうど半分くらいのところに小さな映画館がある。そのポスターを見付けたのは大庭だった。
「『呪われた洋館』だってさ。ベタだね」
「ネーミングセンス疑うよ、全然面白そうじゃない」
その時やっていたホラー映画だ。
「そういえば、嘉永で洋館持ってるんだよね」
「なんで洋館なんか…まあ嘉永なら持ってそうだけど」
「そこね、幸坂賢京が出るって噂」
幸坂賢京とは、嘉永会大学の創立者だ。大庭の話を聞いていると、その洋館は幸坂が最期を迎えた家だったそうだ。
「茉子ちゃん今度行こうよ」
「えー?なんで?」
「幸坂賢京に会いに」