第3章 11
結局最後まで律子と向き合わなかった俺は、後悔と開き直りとがないまぜになった感情を抱え、その後の高校生活を変なテンションで過ごしたため、何故か妙なキャラクターの人ということになってしまった。
三年生の秋に、推薦で嘉永が決まった時、やっと妙な自分から解放される、と心底ほっとした。うちの高校から嘉永に進む人は殆どいないのだ。
茉子は一般入試で和田堀に進学することが決まった。ずっと一緒にいてくれた茉子と離れることに不安を覚えたが、遅かれ早かれいずれ離れることになるのだ。そのタイミングが今来ただけだと自分に言い聞かせ、卒業式を終えた。
入学式。卒業式で見上げた空と同じ色の空が頭上には広がっている。違うのは、桜の薄紅色が時々目の端をかすめることくらいだ。
三年間同じクラスで過ごした茉子の影響は絶大だったようで、俺は文学部の国文学コースだ。たまたま入学式で隣に座った男子も国文らしく、せわしなくずっと喋っている。彼は「オオバコウジ」だと名乗った。
入学式後のオリエンテーションも彼と受けた。ちらっと彼の手元を見ると意外としっかりした字で「大庭興二」と書いていた。
「珍しいだろ、これで『オオバ』って。小学校の時なかなか読んで貰えなくて大変だった」
俺の視線に気付いた大庭がにやっと笑ってそう言った。




