第1章 4
無機質なバイブ音で目が覚めた。六時十八分。差出人、大庭興二。「結局飲んじゃった(笑)」至極どうでも良い内容である。昨日のメールを皮切りに、何通かやり取りをする中で、大庭が今日上野の店舗の応援に行くことを知っているから、少し心配だ。「今日上野の応援だよね?」と送るとすぐに「十二時からだから十時までは寝られる」と返事が来た。
結局大庭のメールで起きてから二度寝は出来ず、七時半までぼうっとして過ごした。何もせずにぼうっと過ごすのは最も贅沢な時間の過ごし方だと思う。今まで誰も共感してくれた人はいないが、なんとなく大庭なら共感してくれる気がした。今度話してみよう。
従妹とは九時に駅で待ち合わせだ。母と朝食を摂りながらテレビを眺める。日曜日の朝らしい、時間の経過がのんびりとした番組でタレントが平和に立ち回っている。その番組を見た目で新聞を読んだら、新聞もふわふわとした記事ばかりに思えた。
のんびり番組とふわふわ新聞に気をとられていたら、従妹との待ち合わせ時間にぎりぎりになってしまった。慌てて支度をし、家を飛び出す。駅に着いたら従妹の蕾は既に到着していた。まずどこに行きたいのか尋ねると、
「嘉永に行きたい、キャンパス綺麗だったって友だちが言ってた」
と言う。嘉永会大学は大庭の通う大学で、私が通う和田堀大学とは永遠のライバルだ。和田堀ではなく、嘉永に蕾が興味を示したことは少々複雑だったが、実は私も嘉永に行ったことがないから、観光気分で一緒に行くことにした。