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第2章 13
「それより、今日の夜、皆宜しくね」
そう、今日は待ちに待った懇親会の日だ。各々のシフトが終わり次第、勝手に会場に向かうことになっている。
「渋谷だっけ?私地図読めないから大庭連れてって」
茉子ちゃんを渋谷に放り出したら危険だ。
「オッケーオッケー。茉子ちゃんならどこへでも連れってってあげるー」
適当に言ったがこれは本心。お願いされたら本当にどこにでも連れて行ってあげたくなるだろう。適当な俺の返答に胡散臭そうな視線を茉子ちゃんが送ろうとしているのを感じ、こちらからじっと見つめる。やっぱり茉子ちゃんは可愛い。変な男に絡まれたら大変だから今日の上がりは俺の方が後だから待っていて貰おう。
「『赤光』…斎藤茂吉の処女歌集…」
俺も茉子ちゃんも解説しようとしないので朝比奈が調べたらしい。
「あ、知ってる。高校の時文学史でやったやつだ」
「でも『赤光』引いた意味よく分かりませんよ」
仕方がない。解説してやるか。茉子ちゃんから視線を外し、朝比奈の方を向く。俺は話しながら目の端に茉子ちゃんが逃げるように事務所から出て行くのを見ていた。




