第2章 12
ゴールデンウィーク明けに、大学の授業終わりにそのまま店に直行する。店の最寄駅の方から茉子ちゃんらしき人影が近付いてくるのが見えたところで、俺の電話が鳴った。表示を確認すると「母さん」とでかでかとある。
「どがんしたと?」
茉子ちゃんに片手を挙げつつ母親に応じる。どうも野菜を送ったらしい。生活費を自ら賄っている身としては有難い限りだが、母親が送って来る野菜の量はいつも半端ではない。一体俺が何人いると思っているのだろうか。
なんだかんだと話しているうちに、店に到着した。茉子ちゃんは暫く俺を待つ素振りを見せたが(多分聞こえている)俺の母親のマシンガントークが切れないのを感じ、先に事務所に入ってしまった。
事務所に入ると、茉子ちゃんがちらとこちらを窺う。
「斎藤茂吉が『赤光』を書いた時の気分はこんな感じだったのかな」
と言うと、
「もうちょっと分かり易く言おうか。多分私以外誰も理解出来てないよ」
と茉子ちゃんが言う。見渡すと、皆一様に苦い顔をしていた。なんとなく優越感。その優越感に浸りたくて、新人たちが解説を求める視線を送ってくるが、敢えてスルーした。




