第2章 10
最近のシフトが茉子ちゃんのいる時ばかりだったから、一人で帰るのは久し振りだ。ついこの間まで当たり前だった一人の帰り道がひどく味気ないものに思える。いつも茉子ちゃんは俺一人では見付けられない面白いモノを見付け、教えてくれていることが分かった。昨日横目で見たビルのガラス窓の前に来ると、泣きそうな俺が一人で立っていた。
スマホの画面に茉子ちゃんの連絡先を呼び出してからかれこれ五分は経っている。思い切って「通話」をタッチし、コール音を数える。六回きっかり数えたところで、茉子ちゃんの声に切り替わった。
「「もしもし」」
言った言葉が重なり、ふふふ…と笑っているのが分かった。取りあえず元気そうで安心する。
「どうしたの? …まさか今日問題起こった?」
「電話連絡が来る=問題発生」と考えるのは流石はアルバイトリーダーか。声だけで青ざめているのが分かる。
「いや、店は俺がいる時間は滞りなく営業してたよ、ゴールデンウィーク中で人がいつもより多くて朝比奈が目を白黒させてたくらい」
「忍くん…(笑)」
「忍と言えば、今度の懇親会の司会進行、朝比奈にやらせようと思ってるんだけどどうかな?」
「あーいいんじゃないの、ちょっと真面目過ぎるから開花させようよ」
開花か、何やらせれば面白くなるか俺はすぐに思いついたが、当日までのお楽しみにしよう。




