第2章 8
授業が終わり、皆が立ち上がる音がしても、俺は動かなかった。
「…じ、……こうじ、興二!」
いつも一番に教室から出て行く俺が外を眺めて動かないのを見て、蒼が近付いて来ていた。
「興二どうした?」
昨日の事務所から、なぜか気分が晴れない。
「≪起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめ暮らしつ≫って感じだな」
「はぁ?意味わかんねーよ、やっぱ興二おかしい」
「雅じゃないねー蒼、その反応は鄙だ。歌を返すべきだよ、そこは」
立ち上がりながらそう言うと、蒼は変な顔をして立っている。
「茉子と同じような話の振り方するの、やめてくれないかな?」
「うん? 同じような話の振り方って?」
それは体感済みだが、蒼の中では俺と茉子ちゃんに面識はないから、聞き返す。何となく言うタイミングを逃して、茉子ちゃんと働いていることを蒼に話していない。
「茉子、和田堀の教育の日文だから、さっきの興二みたいな話の振りをぽんぽんしてくる。俺じゃついていけない」
「あらー素敵じゃなーい、そういう話出来るのって」
「はぁ? なんだよその口調。キモイ」
「ひどいわ、蒼くん。あたしにそういうこと言うなんてっ」
蒼に抱き付こうとすると、本気で嫌がられ、逃げられた。そのようにふざけて笑っていたら、いつの間にか気分は晴れていた。




