第2章 3
俺の実家は佐世保にある。親からは「大学で県外に出るなら、学費は出すけれどそれ以外は自分で工面しなさい」と受験時に言われた。東京に出たかった俺はその条件を飲み、家賃含め生活費を全て自分で工面しここにいる。だからなるべく稼ぎたいし、なるべく節約したい。「時給三割増しにするから他の店舗に三ヶ月間行ってきてくれ」というオーナーの言葉に、ただ単純に金目当てでその誘いに乗った。そこが彼女のいる店舗であることはおろか、彼女の存在さえもすっかり忘れていた。
その店舗が彼女のいる店舗であることを思い出したのは、亮平の言葉だった。
「興二、暫く初前さんのとこ行くんだって?いいなぁ、なんで興二なんだろ」
行く店舗に最長期間の人がいて、俺は二番目に古くて、彼女と新人教育をして来いと言われていた俺は、亮平の「初前さん」という言葉を聞き、彼女だろうと検討をつけた。
「この近辺の店舗で一番長いのが初前さんで、その次が俺なんだってさ。新人が多く入ったから教育係だよ、初前さんと二人で促成栽培だな」
羨ましい気持ちを隠さない亮平に苦笑しながら俺は答えた。
「でも興二、今まで応援の依頼あっても断ってきたじゃん。どうして今回引き受けたのさ」
時給が上げられることは誰にも言わない…そうオーナーと約束した俺は、事前に準備していた返答をする。
「単発の応援ってその場限りの人間関係じゃん、俺そういうの嫌。三ヶ月もあればちゃんと出来るから」
「興二って意外とそういうことちゃんと考えるよね」
「意外とって何だ、おい(笑)」
亮平と言い合っていると電車が着いた。




