第2章 1
初前茉子。世間とは狭いもので、俺は関係のない二人からその名前を聞いた。
一人目は、大学の友人である、安川蒼。彼女とは仲が良いらしく、よく電話をしている。電話口から漏れ聞こえる声は女の子そのものだ。蒼は女性にモテるが故に女性を苦手とするので、そんな蒼と仲が良い彼女がどのような人間なのか、興味を引かれた。
「茉子?高校の時の友達だよ。一年生の時同じ委員会選んで、それから仲良くて。しかも三年間同じクラスだったからね」
女子からの好意にさらされ、男子から何となくやっかまれた蒼が、教室で唯一息をつけたのが、彼女の傍だったようだ。
「教室にいづらくて、昼休みはいつもグラウンドで走ったりトレーニングルーム行ったり。十分休みは廊下の窓の外眺めながら購買のパン食ったりして…徹底的に教室から逃げてたんだよね」
学食を食べながら、蒼は目を伏せた。
「茉子は、俺が逃げてるの、気付いてて叱ってきたんだ」
それから逃げなくなって教室にいられるようになったものの、逃げていた穴は大きく、クラスに友人が増えることはなかったという。
「一年の時の話ね。二年は反省活かしてちゃんと友達作ったさ(笑)」
「でも、蒼の隣にいて他の女子から何も言われてなかったの?」
気になったので尋ねる。
「茉子はさばさばしてるからね」
蒼は少し躊躇ってから目を逸らして答える。何となく顔が赤い気がするが、追及してもきっと口を割らないだろう。




