第1章 19
スクランブル交差点の手前で大庭が立ち止まる。何かをじっと見ているので、視線の先を辿ってみると大きなモニターがあり、最近売れている作家が映し出されている。酔っぱらっていても大庭は大庭だ。私もつられて見上げていると、大庭が手を繋いでくる。
「わっ茉子ちゃん、手冷たくない?」
「だって店寒かったもん」
梅雨の直前の暑さに、どこでも冷房が効いている。冷え性の私には少々寒い。
振りほどくとより面倒だろう…と無抵抗な私の様子を見て、大庭は肩を抱いてきた。まだ周辺には後輩の女の子たちもいる。私が抵抗すれば大庭は離してくれるだろうが、彼女たちに被害が及ぶ可能性は避けるべきだ。色々考えて表情がくるくる回っているのだろう、私を見て蒼が苦笑している。
作家のリポートが終わり、どうでも良い商品の宣伝が始まった。
「大庭、そろそろ帰ろう」
と、肩を抱いてきている手を軽く叩くと、その手の絡めとられてしまう。
「興二、さすがに離してあげようよ」
もうどうにでもなれ…と私が自棄になったのが分かったのだろう、蒼が動き出す。
「うん、じゃあ離す」
あっさりと解放されたが、次の大庭の発言に私は固まった。
「茉子ちゃん、俺と付き合ってよ」




