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第1章 13

 店を閉め、後片付けをしながら私よりも遅く上がった大庭が着替えるのを待つ。

「茉子さんと大庭さんって仲良いですよね。いつもどんな話してるんですか?」

一緒に片付けている後輩の百合が興味津々な様子で訊いてきた。私は少し苦笑して、

「うーんそうだね…この前は『古事記』について話したよ」

残念ながら、私たちの会話は皆が期待するような内容のものは殆どない。卒業論文や演習、お互い直接研究に関係のない『萬葉集』や『枕草子』の話などだ。

「『古事記』ですか…難しそうですね」

「日本で初めて新婚旅行に行ったのは誰だと思う?歴史上では坂本龍馬なんだけど、『古事記』の世界では違うんだよ」

いつの間にか着替え終えた大庭が後ろに立っていて、そんなことを言う。私はすぐにピンときたが、黙っていることにした。

「『古事記』の…神話の世界では、イザナキノミコトをイザナミノミコトが新婚旅行に行ってるんだよ。そういう話をいつもしてんの。…茉子ちゃんお待たせ、行こう」

何故か素っ気ない大庭を不審に思いながら、慌てて後を追う。外に出て振り返ると百合はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、大庭が扉を閉めてしまった。

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