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人間界でのカイン1

ようやくカインは仕事をすることになりました。

いろいろあってあんまり書いてませんがなにとぞ、

来週はすぐにでも更新します。

 雑踏・・・喧騒・・・そんな言葉しか浮かばないような世界・・・人間界は

とある国のとある街。相も変わらずウルサイ街だ。でも、そこがいいんだよな。そこはアジアで

最も電子関係で有名な街だ。今、俺がいるココはこの街の中でも有名な巨大量販店。俺が

行きつけの店の一つだ。人間界で仕事、アジア圏内、この二つのワードが揃ったらもう決定!

というほどよく来ている店だ。でも別に何かを買う、という訳ではなく、ただなんとなく入って

しまうんだよな。そして入る度に電気量販店ならではで、ちょくちょく目にするこの[テレビ]っていうのはものすごい発明だと思う。

遠い国の物、過去の物を見る事ができる、というのが俺のそう考える理由だ。過去に戻る事は

できないが、過去を残そうとする気持ちを形にしたのが[テレビ]だと思うんだよな。

そう考えると、つくづく人間ってたいしたもんだと思う。さて、あんまりダラけててもしょうがない、なんたって今回の仕事はあと一週間しかないんだもんな。ちゃんと仕事をしましょうか!


 カインは対戦画面から切り替わった画面を見ずに席を立ち、そそくさとその店のゲームフロア

からその階のジュースの自動販売機でジュースを買うフリをしてコートの内ポケットから手帳を

取り出し、最新の名前が書いてあるページを開く。片手で器用に開いた手帳を見ながら

「ガコン」と落ちてきた缶コーヒーをこれまた器用に片手で開けながら口に運び、踵を返し

ながら人の少ない壁際で背をもたれるように落ち着く。あった。数ページ過ぎて左のページ、

四段目に魔力で赤く焼け付いた文字がある。そのほかの文字は黒い。進行中か、済んだかの違いだ。顎を上げ缶コーヒーを勢い良く飲み干すと隣の缶入れに収める。そして空いたその右手の人差し指を手帳の赤い字にそっと触れる。文字が手帳に記される時、その人間の霊気が若干ではあるが含まれて記される。その霊気と死神の霊気を掛け合わせ、死神は己の体と人間の体を結び、その人間の方向を探り、その人間を見つけるのである。カインは人間界に出る前にも一度その人間の霊気を確かめ、その近くに出現したのだが、運がいいのか悪いのか、出た場所はカインの好きな電気街、急ぎたい気持ちもあったろうが、ついフラフラといつもの店に行っては必要ないのにトイレの個室で具現化し、いつもの階のゲームフロアで対戦ゲームに興じてたが、対戦に負けて我に帰って・・・というのがこれまでの流れである。まだ対戦したい、という未練があるのか、ゲームフロアを覗きながらその階のトイレへ歩き、幸い誰もいなかったのでそのまま具現化

を解きそのまま目の前の壁へと突っ込む。壁をすり抜けるとそこは地上から離れた中空、高さにして五階に相当している。カインはそのまま惰性で飛びながら手帳を片手に文字から読み取った、一週間後には死を約束されてしまった「予定者」と通称される人間へと近づく。まるで無重力空間にいるように優雅に流れるように飛んでいるカイン。ふと顔が下を向いた時その下を見やる。平日だからかそうそう車は通っていないが、両脇の歩道はまるでパイプが詰まっているかのようにゴチャゴチャワラワラと人間で敷き詰められている。法則性もないような一人一人の動きは個人個人で目的地はあるのだろうが、人ごみの中遅々としてしか進まない様はうごめく蟻の様だ。とはカインはいつも思う事だ。だが、カインはこの街の、こういうところも実は好きだったりする。ワラワラする人ごみに混じるのもカインの楽しみの一つというが、あまり理解したくない趣味である。流れるように飛びながらいろんな看板にすり抜け進んでゆくカイン。ウトウトし始めたのか目をしばしばさせていたが、急にハッキリ目を開けて立つように姿勢を戻す。見つけたようだ。手帳で読み取った霊気と、そのカインの先にいる人間の霊気が完全に同調した瞬間。カインの意識にハッキリしたその人間の霊気が流れ込んでくる。そこで初めてカインと「予定者」の関係は成立する。その人間の死へと向かって・・・。

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