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主任室にて

まだまだ解説が続きます。が、本編も動きます。

多少推敲も必要なのでちょろちょろ手直しするかもしれません。

申し訳ないです。

 ここは冥界、主任室・・・。広い部屋に一つの黒ずくめの人物が静かに白い手を伸ばし、

その大きな机の中央にポツンと立っているカインの目線の先に手を置き、細い指先で

 コンコンッ と軽くつつく。カインはその黒い人物に姿勢から向きなおす。人物を見上げる

カイン。眼前にそびえ立つ黒い山のようにも見える。顔部分である山頂部はドクロで

できている。細く白い手も想像通り、白骨の手だ。主任の姿は黒いローブを被ったガイコツ、

という死神のイメージそのものの姿をしている。が、それは仮の姿、といわれている。

主任の真の姿はなんなのか。また、どんな人物なのか、は、会話の中で解るかもしれない。


「要請に従い、カイン、まいりました。」

姿勢を正し、カインが口を開いた。

「うむ。」

二重に響く声、男女混声のような声がガイコツの口から聞こえた。

「で?お呼びになった用はなんですか?今回のノルマは既に終わってますし、トラブルに

 関しての始末書も書き終わってますし、その件の減棒も食らいましたし!」

最後の件に妙に語尾を荒げた感があるが、姿勢はそのままだ。

「今回呼んだのは、単刀直入に言えば臨時業務をやってもらいたい。ということだ。」

出していた手を引き戻しながら腕を組み椅子に持たれかかる。

「『やっぱり・・・あ!』」

部屋全体にこもったようなカインの声が響き渡る。だがカインは喋っていない。

「そう思うのも無理はないが、あまりに急だったので出払っている死神達では対処できず、

 連帯的悪魔の生成も・・・」

「間に合わないんですか?」

「そうだ。」

と言って組んでいた腕をほどき、右手の人差し指をカインに向け一瞬指先が光る。

直後、カインが胸ポケットに手を入れて一冊の手帳を出す。手帳には先ほどの主任の指から

魔力が宿りぼんやりした青白い光を帯びている。光る手帳を見つめていたカインは突然

押し付けられた仕事に一回、怪訝そうに主任を見やり手帳に目を戻しながら器用に片手で

手帳を開く。手帳は手のひら位の大きさで、革製のカバーがかかっている。数ページ

めくった所で指が止まる。手帳のなかほどの左のページ、上から横書きで、これまた人間には

読めない文字で時間、日付、名前、場所、要因、が書かれている。ほとんどの文字は黒いが

一番下の文字は、まるで焼きついているかの様に赤く、時折プスプスと焦げたような音を

させていた。その文字を見てカインは驚いた。

「なっ!一週間!?」

「そうなんだ。霊界からの手違いがあったらしく人間の因果律動の乱れがよほど酷くてな、

「天命の輪」も偶然死相を見つけたらしい。」

「偶然、て・・・」

「人の生き死にとは特に決まっているわけではない、が「天命の輪」が下す決定は絶対だ。

 通常は半年か二ヶ月前くらいに運命的寿命が判明するが・・・」

「今回はコレ、ですか?」

「そういうことだ。臨時に魂の回収に回す為の連帯的悪魔の生成は少なくとも十日かかる。

 従って急場に動ける死神はお前だけ。というのが今回の経緯だ。」

主任の言葉を全て聞き、少し間をおき、

「・・・ふん!・・・」

大きな鼻息でのため息。カインは頭をかきながら再び手帳を見る。

「『へえ、日本か・・・あ!くそ!』」

再び部屋に響くカインの声、この声は口から出てはいない。この部屋が魔界の冥界にある

という特殊な空間ならではの部屋だ。ということだ。この主任室は部屋に入ってきた者を

所有者が支配することができる。死神は、人間の生命、魂を扱う重要な場所で、しかも魔界側

の存在である。邪悪な存在から偽りを行う者がいないとは限らない。そこで、死神の世界、

冥界を支配する冥王ハーデスは、その部屋そのものに、ある種の魔力を宿らせた。【思いの鏡】

と呼ばれる力で、その部屋に入った者は、いかなる者でも、心の中を音にして出してしまう。

部屋全体に効果があり、その部屋の支配者であるとされた者(主任)だけは音に出ないという。

死神を管理する上で重要な部署だからこその魔力である。

その効果でのカインの心の声がでたのだ。

「そう思うだろうと思っていた。お前の好きな日本だ。不幸中の幸いだがお前もマンザラ

 ではなくなったろう。今回は緊急、という事もあり報酬には多少なり色をつけるつもりだ。」

「お!本当ですか?」

「だが、常々言うが、規律を守ろうとする努力はしろ。日頃なんだかんだで規律を破り、

 始末書を書いては減棒を受けているお前だ、今回色をつけると思って余計増える分、

余計暴れるような事があったら色付けの話もなくなると思え。」

恐ろしく冷静な言い方だが主任も興奮しているのか、混声に聞こえた声の女性の声が大きめに

聞こえた。

「『ちっ!やぁれやれ、お見通しか・・・』」

カインという男はどういう時でも図星を指されると悪態にも似た開き直りをするクセがある。

どうせ心が読まれてしまうのだ。とこの部屋で開き直ると決まってこの調子である。

「とにかくあと一週間しかない。これよりその予定者を死神カインに一任する。」

この主任の宣言で、その死神の仕事が最終的に決定するのである。

「了解しました。死神カイン。いってまいります。」

言い捨てるように言い切らぬうちに後ろに飛び、体を振り返らせながら扉へ、着地したのは

扉の五歩手前という距離まで飛んでいた主任はしばらくカインを見ていたが椅子ごと窓へ向け

外を眺めだした。出ようと扉に手をかけたカインが思い出したように口を開いた。

「そういえば主任!旦那さんどんな具合ですか?」

「ん?ああ、おかげでもう元気だ。神の身で【人】に助けられるとは思わなかった。と苦笑

 していたぞ。」

「そうですか。じゃあまた勝負しましょうって伝えてください!」

「まったくお前は・・・よくよく上司に楯突くヤツだな。いいからいってこい!」

ガイコツが笑ったような、そんな雰囲気を感じ取りカインはそのまま扉を出る。

 ここで主任について触れておく、主任は主任室ではガイコツの姿だがその正体は冥王である

ハーデスの妻、ペルセフォネである。ペルセフォネは神界での名で、主任の時はヘカーテ

と呼ばれている。主任の際、ガイコツの格好をするのは女と舐められない為、とは本人の談。

もっともギリシャ神話でゼウスの娘であるペルセフォネはハーデスに一目惚れしたらしく、

最終的には駆け落ち同然で冥界にきては、ハーデスが土下座までして帰って欲しいと頼むが

とうとう冥界の果実を口にしてしまい冥界の住人になってしまう。それほどぞっこんだった

ため、ハーデスも腹をくくりゼウスと争うことになった。結局ハーデスもペルセフォネを

愛していたという事だ。今ではとりあえず事情を理解し合い仲直りしてペルセフォネとして

神界に帰れる様になったと言う。

先ほどの主任とカインの会話を説明すると、カインは時々、他の悪魔にケンカを売る事がある。

動機は単純、ヒマ潰しである。魔界に生きている者達は【死ぬ】という事がない。人間の心によって創られた以上、人間がその存在を完全に忘れない限り、魔界に存在するものたちは

そこに生き続けるのである。しかし、それは「存在が」であり、その世界で活動するためには

体が必要であり、それを維持するエネルギーが重要なのである。天魔問わず、その世界で

物体が形成し、その空間に含まれる成分を魔力。その魔力の密度、圧力によって、それぞれの

世界を形成しているのである。カインは魔界の魔力で体を形成しておりその魔力は魔界独特の

性質を持っている。天界、神界などそれぞれもまた、性質が違い、一言で魔力といっても

いろいろある。しかし、カインには他とは決定的に違うものを持っている。胸元に輝く

乳白色の宝石「マリア」(カインはこう呼んでいる)である。魔界の魔力で形成された体を

持つカインの胸元に光るマリアは魔界に存在するどの性質の魔力とも異なり、最も近いのは、

人間が持っている気、魂と体の作用で発せられる「霊気」。もっと言えば、人間の生命で

できている。という者もいる。なぜそれがカインにあるのか。カイン本人も解らないらしい。

死神を始める頃くらいから、気づけば胸元にあった。とカインは言う。そしてその頃から、

カインは、「成長する悪魔」になった。悪魔などは、本来、いかなる者も、その存在理由、

概念から、それ以上強くなる事、以下に弱くなることはなく、成長できないのが摂理と

されていた。また、「死」がなくても活動する中で、ある事で(ケンカ等で)体を維持

できなくなると、その硬いの中枢意識は、ある場所に転送され、体を形成するまで停滞期

に入る。だが、カインはどういう事態に陥っても、その体から意識が無くならない限り、

マリアがたちどころに回復、というよりも復元してしまう。だからこそひとつの身体で

多くの経験がつめて、カインは成長する事ができるようになったのである。今では腕試しと、

上司である冥王ハーデスにも挑戦し、手傷を負わせ、マリアが治した。というのが先ほどの

会話の内容だ。もともとカインとマリアは別物なのでマリアを離し、別の対象にマリアの力を

使用することはできる。が、大なり小なりその力は一日に一度が限度だという。また、マリアは

カインの精神面にも大きく影響を与えている。もともと死神を始めたキッカケは主任のスカウト

らしいのだがそのスカウトした理由はカインが人間に興味を持っているからだという。

何故人間に興味を持っているのかはわからないが、マリアの存在がその原因の一端にあるのは

間違いないだろう。

さて、長々と話したところで・・・再びカインは人間界にやってきた・・・。

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