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決めなきゃ人生変えられない! シリーズ

初めてのキスはショコラの味

作者: 空橋 駆

”決めなきゃ人生変えられない!”の後日談の一つです。

時系列は後日談その2から更に後となります。

テストも終わって久しぶりの休日。

私と彼はのんびりと……する余裕もあまりないまま、

いつものように私の家で勉強会をしていた。


「ううっ……こんなにすぐ復習しなくても……」

「苦手がまだ克服できてないんだろう?

 補習にでもなったら尚の事大変だから今のうちからやっておくべきだ」

「補習にはならないよ、多分」


一応、後から確認したけどそこそこの点数は取れているはず。

そこそこの自信しかないけど。


「それでも、勉強しておくに越した事は無いさ」

「でも……」


本当はもっと恋人らしい事したいな……

テスト終わったんだから今日くらい休んでも良いよね?


「大体教えた部分が出ていると思うから、

 今回のテストも結構良い結果になっていると思うが……」

「うっ……」

「結果が楽しみだな」

「良い結果でありますように……」

「終わった後で祈っても意味が無い」


その笑顔が怖いです。

でも、私も結果は楽しみかも。



ところで……今、机の上にあるこれは……何?


「某所からの差し入れだ」

「某所って、大体想像が付くんだけど?」


大体この場合って、お姉さんか弟くんのどちらか……

コンビニスイーツだから、多分弟くんの方だと思うけどね。


「あの時、弟くんが買ってきたコンビニスイーツ……

 結構美味しかったんだけどね」

「今はもう売ってないらしい。

 実はそれを頼んでいたのだが、こっちを渡された」

「気に入ってたのに……」

「仕方ないさ、最近は色々な物が出ては消えてを繰り返しているからな」


でも、これ……確か……

何処かで見た事あるスイーツなんだけど……


「奴に聞いたんだが、爆発的に売れて手に入らない代物らしい。

 どうやって入手したのか詳しくは知らない。

 俺は、渡された物を丁寧に持って来ただけだ」

「これ、最近人気の……」


えっと、確か……何だっけ?


「『初恋ショコラ』だな」

「うん、それそれ」


本当に、売り切れ続出で入手が難しいなんて言われているのに、

どうやって手に入れたのか知らないけど……

私もこれ、初めて食べるんだよね。


「とりあえず、折角の差し入れだから早く食べてしまおう」

「賛成~」


待ちきれないのは彼の方だったのかもしれない。

意外と甘い物が好物なの、知ってるもん。


というわけで、二人で一緒に食べる事に。


「まずは一口っ……」

「ひとくち~」


私と彼は、同時にそれを一切れ、口に運んでみる。


「これは……なかなか」

「うん、美味しいっ!」


二人で顔を見合わせて、思わず唸った。


と、彼が私の目をじっと見つめてきた。


「なるほどな……確かにこれは……

 思わずあの強烈な宣伝文句が出てしまいそうだ……」


これは、もしかして……

宣伝文句、言っちゃうの?


「は、恥ずかしいから一回だけしかやらないぞ?」

「う、うん……」


彼は一呼吸置いて……


「ケーキとぼくのキス、どっちがすき?」


どきり、とした。

似合いすぎてとっても格好良いんですが……


彼、大事な事忘れてるよね?


「比べたくてもキスした事ないでしょ!」

「お、おう……」


彼がうろたえているのを見て、

私はもう少し意地悪をしたくなってしまった。


「今からしても、いいよ?」

「いただこう」


私が答えた瞬間、彼は顔をすっと近付けて来て、

そのまま静かに私と彼の唇は重なっていた。


「なっ……」


誘ったのは私だけど、まさか準備もなく本当にされてしまうなんて。

嬉しいけど、とっても嬉しいんだけどっ……


「さあ、これで判断できるだろう。

 ケーキと、僕のキス。どちらが良いかな?」


勿論答えなんて決まってる。


「キスの方が、いいっ……」

「嬉しいね」


彼がそっと微笑んでくれる。

私も照れて顔が真っ赤になっていく。


「でも、ケーキの甘さが入ったキスだと、

 蕩けちゃいそうで最高かも……」

「欲張りだな、お前」


えへへ……

それだけ好きな気持ちが溢れているのですよ。


「もう一回、しよっか?」

「望むなら、ケーキが無くなるまで」

「うん、お願い……」


私達はそのまま、キスを繰り返した。

ケーキを食べながら、啄ばむように、3回も、4回も……

甘くて、蕩けるような……


「癖にならない程度にしておこうか」

「うん、止められなくなりそう」


美味しい美味しいお菓子を食べて。

寄り添って過ごす一日がとても嬉しい。

もっと、もっと欲しくなるけど……

今は、ここまで。


「待て、動くなよ……」

「ん……」


彼の指がそっと私の口元へ。


「取れたぞ」


口元に付いていたチョコレートをそっとで拭ってくれた。

こんな気遣いが、とても嬉しい。


「ありがと」

「このまま、もう少し居るか」

「うん」


誕生日を過ぎてから、今日は一番幸せな一日になったかもしれない。

そんな事を、思った。



~ おまけ ~


「そういえば、先日食べた『初恋ショコラ』だが……」

「ん……どうしたの?」

「奴に感想を投げておいた方がいいか?

 何か一言くらい欲しいと言われたのだが、強制はしないと言っていた」

「弟くんに……ん、美味しかったよありがとうって……」


なんとなく、色々と恥ずかしくなってきた。

あの時の甘くて蕩けるようなキスの味……

何か、『初恋ショコラ』を食べる度に思い出してしまいそうかも。


「俺からは、甘くて幸せな時間を味わえたと伝えておくか」

「それ伝えたら、今度は絶対に企み込みで送りつけられるよっ!」


絶対に後でからかわれる。

その上、お姉さんにも伝わって更に色々と問い詰められるかも……


「また、キスしたくないのか?」

「したいけど、今は我慢しよ?」

「そうだな、卒業するまで甘い生活は控えよう」

「うん……」


毎日が、そもそも甘い生活のような気がするけど、

気にしたら負けだよね。


「でも、これはまた食べてみたいな」


私は、コンビニの入り口に偶然貼ってあった『初恋ショコラ』の宣伝ポスターを指差して言った。


「今度、一緒に買いに行くか。

 テストの点もしっかり取れていたから、ご褒美も兼ねて」

「うんっ、ありがとう!」


そう、先日のテストの結果が良かったので、

今日の私と彼は揃ってご機嫌なのです。


「好物のプリンもまた作ってあげるね」

「期待している」


そして私達は、笑顔で頷きあった。



こんな幸せな毎日が、これからも紡がれていきますように。

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