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BLACK KNIGHT  作者: しーどら
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帰還

裏取引の黒幕は依頼人のクーフェだった。

クーフェの言葉にいつも以上に怒ったガルムがクーフェを圧倒して無事に依頼完了した。

俺たちは一旦宿舎に戻ることに。

「ん、ん……」


朝、窓から射す日の光が眩しくて目が覚めた。

身体に残る僅かな虚脱感を感じながら起き上がる。


「すー……すー……」


横を見ると一糸纏わぬガルムが寝ていたので起こさないようにベットから出ようとした時。


「んぁ……ろ、き……」

「ん?」


ふと名前を呼ばれたので起こしたかと思いガルムを見る。

しかしすーすーと静かに寝息をたてているのでどうやら寝言だったようだ。


「……こういうときは素直で可愛いんだけどな」


その寝顔を見ている内に自然とガルムの頭を撫でていた。


「ぁ……ぇ……ロキ?」

「あ、悪い。起きたか?」

「……っ!」


昨夜の事を思い出したのか顔がみるみる赤くなっていくガルム。

そこでハッと自分の格好に気づいたようだ。

慌てたようにシーツを引き寄せた。


「別に隠さなくてもいいだろ?」

「そういう問題じゃないの!」

「へいへい」


追い出されるように部屋から出るとちょうどマーニが朝食を作っていた。


「あら?おはようございます。ガルム様は?」


俺が先に起きて来たのが珍しかったらしく、少し驚いた様子のマーニ。


「もうすぐ来ると思うぜ?……ふわぁ」


欠伸を噛み殺しながらマーニの質問に答えながら椅子に座る。


「どうぞ」

「ありがとな」


マーニが淹れてくれた紅茶ミルクティーを飲む。

控えめな甘さで頭が幾分かスッキリした。


「それで本日はどうなさいますか?」

「ん……依頼も終わったし帰る」


昨夜はクーフェ達を街の警備に渡した後に宿舎に戻って来たのだった。


「……おはよう」


着替え終えたガルムが部屋から出て来た。

心なしか頬が赤い気がする。


「おはようございます。ガルム様、何か買う物はありますか」

「え?買う物?えっと、そうね……今は大丈夫よ」

「なんか買う物あるのか?」

「できれば調味料などを少々補充しておきたいと思いまして」

「そっか」


マーニがガルムに紅茶を差し出す。


「ありがとう」


それから一息して。


「それじゃ買い物してから帰りましょうか」

「ありがとうございます」

「気にしなくていいわよ」

「じゃ、俺は散歩してくる」

「あんたは荷物持ちでしょ!」

「……わかってるよ」


それから宿舎を出て街の市場を見て回った後で、グラズヘイムに戻る事にした。


………………


…………


……


グラズヘイムにあるホームに着いたのは昼を少し過ぎたくらいだった。


「それじゃ、私はギルドで今回の報告をして来るから。あんた達は先に帰ってて良いわよ」

「あ、今回は俺も行くぞ」

「へぇ……珍しいわね。どうしてよ?」

「ジジイに一言文句言ってやる」

「あ、そ……」

「では、私は荷物を整理した後伺いますね」

「分かったわ」


そうしてガルムと一緒にギルドに向かうと。


………………


…………


……


ギルドの扉を勢いよく開けた。


「おい!じじ「うおりゃああああぁぁぁぁあああああ」んなっ!!??」


瞬間に何かに思い切り吹っ飛ばされる。


「っが!?」


空中で体制を立て直そうとしたが間に合わずに6メートルほど地面を転がり止まった。


「……っっ、なんだぁ?」


ギルドの入り口を見上げると。


「……遅い!ランクCの依頼に何時まで掛かってんだ!」


赤い髪を後ろで三つ編みにしている少女が仁王立ちしていた。

その手には背丈に不釣り合いな巨大な鎚〈ミョルミル〉が握られていた。


「はぁ……やっぱりお前か、レヴィ」

「フン……」


レヴィは不機嫌そうにそっぽを向いた。


「ったく、俺じゃなきゃ今頃大怪我だぞ?」


立ち上がりレヴィの頭を撫でる。


「う~……子供扱いすんな!」


レヴィは俺の手を払ってギルドの中に戻って行った。


「大丈夫?」

「ん?ああ、平気平気」

「……〈ヴァルハラ〉のメンバーの不意打ちを受けて平気なんて普通無いわよ」

「どうかしましたか?」

「お、マーニ。何でもねえよ」


マーニが追いついて来たのでギルドの中に入る。


「遅かったな」


ニョルズがこっちに歩いて来た。


「お久しぶりです。ニョルズ様」

「三日振りだったか?」

「はい」

「お前らに話があるからこっちに来い」


ニョルズの後に着いて行く途中。


「なんだ生きてたのか」


紺色の髪をした男が話しかけて来た。

コイツの名前はウル。


「お久しぶりです。ウル様」

「おう、久しぶりだな」

「マーニ。こんな奴に様付けする事ないって」

「マーニも大変だな。こんな奴の面倒を見なくちゃいけないなんて」

「馬鹿ウル、喧嘩売ってんのか?」

「売ってたらどうすんだ?阿呆ロキ?」


俺とウルの周りの魔力が溢れ出した時。


「やめなさい!」

「がっ!?」

「ごっ!?」


ガルムに後ろから後頭部を殴られた。


「ふふ、相変わらずね」


その時、一人の女性が歩いて来た。

長いウェーブの掛かった金髪の美女だ。


「……マリア」


彼女の名前はマリア。


「お久しぶりです。マリア様」

「えぇ。元気にしてた?」

「はい」


マリアの横にはレヴィも居た。


「いやなに、お前達が今日帰って来ると言ったらレヴィが残ると言い出してな」

「そんな事言ってねえだろ!?」


ニョルズの言葉をレヴィが真っ赤になって否定する。


「なんだ、そうだったのか?」

「違うつってんだろうが!!」


レヴィが付けていた腕輪が光り腕輪が巨大な鎚〈ミョルミル〉になった。

レヴィがミョルミルを振り上げた時。


「ここで暴れるな」


ニョルズがミョルミルを手で掴んで止めた。


「お前が変な事言うからだろうが!」

「がははは、ちょっとした冗談だったんだがな。悪かった」

「ったく……」


ニョルズが手を離すと、ミョルミルが光り元の腕輪に戻った。

レヴィのミョルミルは魔具という特殊な武器で武器形態と待機形態に変形できるのである。

他にも普通の武器より魔力の適応性が高かったりと大変便利な物だ。

ちなみに俺のフェンリルやガルムのオルトロスも魔具だったりする。


「ふふ、でもロキに会えずに落ち込んでたのは本当よね」

「なっ!マリアー!」

「はぁ……これがギルドの最強チーム〈ヴァルハラ〉のメンバーなのよね」


ガルムがため息を吐いていた。

そう。

マリア、レヴィ、ニョルズ、ウル。

この四人はギルドの最強チーム〈ヴァルハラ〉のメンバーだ。

そしてマリアは〈ヴァルハラ〉のリーダーでありギルド最強の魔導師でもある。


「それで、なんか用か?」

「ん?ああ、マスターから伝言だ」

「伝言?じじい居ねえのか!?」

「マスターは今ミズカルズに行ってるの」

「ミズガルズに?なんで?」

「休暇らしいぜ」

「ハァ?」


この大陸の周りには八つの島があり、その西に位置するのがミズガルズだ。

それにしてもあのじじいめ……。


「それで、伝言てのは?」

「伝言は二つよ。一つは今回の依頼が偽物だったから報酬が一切出ないこと」

「はぁ!?ふざけんな!」

「まぁ少し落ち着いて」

「これが落ち着いてられるか!」

「落ち着きなさいって言ってるでしょ!!」


またも後頭部をガルムに殴られる。


「ってぇ……なにすんだよ」

「あんたが騒ぐからでしょ」

「くく、相変わらず夫婦漫才みたいだな」

「誰が夫婦よ!」


ウルも殴られていた。


「それで、もう一つは?」

「もう一つは依頼よ」

「依頼?」

「えぇ。ランクBのね」

「絶対に嫌だ。というか、お前らがやればいいじゃねえか」

「俺たちはマスターの代わりに此処に居なきゃいけねえんだよ」

「ちなみに依頼内容は?」


ガルムがニョルズに尋ねる。


「ヴァナヘイムの魔物討伐だ」

「ヴァナヘイム……ね。その魔物って?」

「オークだ」

「オーク?どうしてオークの討伐がランクBなのよ?」


オークは魔物の中でも比較的弱い部類だ。

多少知恵がありムカつくがそれでも普通はランクDくらいで対処されるはずだ。


「それがな……ヴァナヘイムの町がの一つが大量のオークによって占領されたらしい」

「なっ!?」


規模の大きさに驚愕するガルム。

確かに普通の話じゃないな。


「分かっただろう……本当は俺が行きたいんだかな」

「そっか、おっさんはヴァナヘイム出身だったっけ」

「あぁ」


ニョルズはギルドでも古株の魔導師で、マスターが不在時のギルドの責任者だ。


「やってくれる?」


マリアが再度聞いて来る。

その目は真剣だった。


「……分かったよ。話を聞いた以上やるしかねえだろ」

「ふふ、ありがとう」


と、いきなりマリアに抱き締められた。


「なっ……」


瞬間、思考が止まった。


「ちなみに応援としてレヴィも一緒に行くからからお願いね」


突然のことで動揺を隠せない俺の耳に囁くマリア。


「あぁ……って、え?」


パッと素早い動きでマリアが俺から離れる。

と、同時に上から高い魔力が……。


「何時までマリアに引っ付いてんだ!」

「あっぶね!?」


間一髪で頭上から降って来たミョルミルを避ける事に成功する。

先程まで俺が立っていた床に大きな穴が空いていた。


「おい、洒落になってねぇぞ!?」

「黙れ!何時までもデレデレしやがって!」

「してねぇよ!」


と、そこでレヴィの頭にマリアが手を置く。


「レヴィ」

「あ……」

「はい、おしまい。……みんなを頼んだわよ。レヴィ」

「うん!」


すっかり上機嫌になったレヴィ。

……調子の良い奴め。


「それじゃあ、さっさと出発するぞ」

「なっ!俺たちは帰って来たばかりだそ?」

「知るか」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


先に出て行ったレヴィをガルムが追い掛けて出て行った。


「……ロキ」

「ん?」


呼ばれて振り返るとマリアが見ていた。


「いってらっしゃい。気をつけてね」

「!……あぁ」


マーニが一礼してついて来るのを見ながら早足にギルドを出て、先を行くレヴィ達を追いかけたのだった。

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