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BLACK KNIGHT  作者: しーどら
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死の風

ガルムの洗脳はアーサー達の幻覚魔法を破ったことで解けた。

ロキとガルムは無事にトリスタンと合流出来たのだが……。

「アーサー!?皆さん無事ですか!?」


トリスタンがボロボロになったアーサー達に駆け寄る。


「トリスタン……私は大丈夫です。それより他のみんなをお願いします」


アーサーが剣を床に突き立てながら立ち上がり、トリスタンに指示を出す。

その指示に従って回復魔法をランスロット達に掛けていくトリスタン。


「おいトリスタン。とりあえずアーサー達と一緒に退避してろ」

「えっ!?で、でも……」

「トリスタン、ロキの指示に従いましょう。……ご武運を」


アーサーはそう言ってチームメイトを担ぎながら部屋を出て行った。

俺は背負っていたガルムを壁際に下ろすとフェンリルを握り直しながら部屋の奥にある祭壇に立っている魔女に気を配りながら近づく。

とんがり帽子に長いローブを纏った女。

まさに魔女だった。

その魔女は俺を見ると何が面白いのか笑い出した。


「おやおや。随分と人間らしくなったじゃないか?」

「……なんか昔にあったみたいな口ぶりだな」

「実際に会ってるんだけどねぇ……。まぁお前さんは覚えてないだろうけどね」

「なに?」

「ふふふ、鎌女は元気なのかい?」

「――」


魔女の言葉を聞いた瞬間に、俺は自分に強化魔法を掛けて魔女の後ろに回り込んでんだ。

そのまま魔女が振り向くよりも速くフェンリルを全力で叩きつける。

が、


「っ!?」


魔女にぶつかる直前で風の障壁に阻まれた。


「おっと、危ないねぇ。名乗りも聞かずに攻撃なんて。早い男は嫌われるよ?」

「うるせえ。知ってんならさっさとアジトの場所を教えやがれ」

「何を言ってるんだい?ここが私のアジトに決まってるだろう?」

「このっ……!!」


フェンリルに加える力を強めるが風の障壁を破れそうにはなかった。

魔女は余裕そうな顔を崩さないまま可笑しそうに喋り続ける。

俺がフェンリルの銃口を向けた瞬間、俺の本能が危険だと叫んだ。

咄嗟にジャンプして魔女を飛び越えて距離を取る。

見ると、俺が居た場所の床が切り裂かれていた。


「それにしても昔に比べてずいぶん弱くなったねぇ?」

「俺はお前のことなんか知らねえよ!」

「そうだったねぇ。なら自己紹介だ。私はフレスベルグだ。死の風の魔女さ」

「……ギルドの魔導師ロキだ」

「ロキ、ねぇ……ならロキ、今度は私の人形にならないかい?盗んできた人形はお嬢ちゃんたちに壊されちゃったからねぇ」

「人をおちょくるのが随分好きみたいだな」


言いながらバスターを放つ。

まっすぐ一直線にフレスベルグに向かってい飛んでいき風の障壁にぶち当たった。


「――ふふ、まぁまぁな威力だねぇ。でもさっきのお嬢ちゃんのに比べたらまだ弱いよ?あのお嬢ちゃんの一撃は受け流すしかなかったからねぇ」


どうやらアーサーの聖剣でも駄目だったらしい。

今の俺に聖剣を超える威力の魔法は撃てない。


「――はっ、上等だ。その余裕そうな厚化粧、さっさと剥がしてやるよ」

「ふん。口が達者じゃないかい。昔みたいに黙っていればかわいいものを」


危険。

またもや俺の本能が叫んだ。

俺はすぐさま床を蹴ってその場を離れる。

すると今まで立っていた床がまたもや切り裂かれた。

その場に留まるのは危険と判断して、ジグザグに動き回りながらフレスベルグとの距離を縮める。

左右に動きながらなのでなかなか距離が縮まない。


「……それにしても良く避けるねえ。さすがに初見で避けるとは驚きだったよ」

「こっちも驚いたぜ。まさか魔力光が無色の奴がいるなんてな」


そう。

先ほどから床が切り裂かれている見えない攻撃は単純な風の刃だろう。

魔法で火や水などを生み出すとその物質には生み出した魔導師の魔力光を帯びる。

だが魔力光が無色で、元々色や形の無い風が相手となると。


「……本当に見えねな」

「その割には余裕そうに避けているじゃないか」


俺が見えない攻撃を避けれているのは、フレスベルグの目線を読んでいるからだ。

後は経験からくる勘だけである。

フレスベルグが笑みを深める。

その瞬間、俺の背中に悪寒が走った。

俺は直感でバックステップで距離を取り、バレットで弾幕を作り出した。

直後、弾幕が見えない風の刃とぶつかる。

フレスベルグの周り全ての床に傷が入っていた。


「へぇ……今のは本当によく躱せたね」


驚き半分と感心半分と言った様子のフレスベルグ。


「いや、今のはヤバかった。……本当に、見えないっていうのは厄介だな」


全方位攻撃。

見えない攻撃によって繰り出されるそれはまさにほぼ必中の技だろう。

現に俺が避けれたのは運が良かっただけだ。


「くそ、せめて近づければな」

「近づければなんとかなるの?」

「あぁ。あの余裕ぶった厚化粧を引っぺがして……ん?」


思わず零した愚痴に返ってきた問いに答えて後ろを振り返るとガルムが立っていた。


「ならさっさと突っ込みなさい」

「無茶言うな!見えない攻撃を避けるので精一杯なんだよ!」

「なら見えれば問題ない訳ね」

「は?」


そう言うと俺の足元に魔法陣が現れた。

半透明な黄緑色の風が俺の体の周りに渦巻き出した。

その範囲は徐々に広がってやがて半径五メートル程の円状に留まった。

簡単に言えばオーラを纏っている状態だ。


「これで攻撃が見えるはずよ。ちなみに言っておくけど防御能力は殆んど無いから。ほら、維持するのも大変なんだから早くしてよね。」


流石にマリアが信頼するだけはあるな。

おそらく付加魔法の応用だろうがこれほど大規模な状態を維持するとなると性能をいくら落してるとはいえ結構な魔力を維持するはずだ。

そう考えてフレスベルグとの距離を一気に詰める。

するとオーラが切り裂かれて無色の刃が見えるようになった。

見えるようになったので危なげなく避けれるようになり、一気に距離を詰める。


「っ……まさか飼い犬に噛まれるなんてね」


そう呟くフレスベルグの顔に初めて焦りの表情が浮かぶ。

フレスベルグの側まで近づくと風のオーラが掻き消されていた。

やはり風の障壁が貼ってあったようだ。


「喰らえ!」


俺は勢いそのままにフェンリルを思い切り叩きつける。

が、またもや障壁に阻まれて攻撃は通らなかった。


「……ふふ、どうやら無駄だったみたいね。さっきと変わらない攻撃で私の障壁を破れる訳ないでしょう?」

「そうだろうな」


今度は先ほどとは違い、防がれること前提でフェンリルをぶつけたのだ。

その銃口は真っ直ぐフレスベルグに向いている。


「こっちが本命だ!喰らいやがれ!」

「なっ――っ!?」


零距離で放ったのは炸裂弾カノン

流石に俺も爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ。

床に突っ込むと思ったが、背中からの衝撃は柔らかかった。


「まったく無茶するわね……」


振り向くとガルムが呆れ顔で俺を抱えていた。


「サンキューな」

「どういたしまして」

「調子に乗るな!このクソガキがぁ!!」


ガルムに礼を言ったところで煙が吹き飛び、大声が部屋に響く。

煙が晴れると服のあちらこちらが破れてボロボロになった姿のフレスベルグがこっちを睨んでいた。

その服の間から露わになった肌を見て、目を細める。


「あんた魔人だったんだな」

「っ!うるさい!だまれぇ!!」


フレスベルグはその体のいたるところから羽を生やしていた。

魔人。

魔獣と人の混血とされて、親の魔獣の特徴が体に現れる事があり差別を受けることもある。

しかし強大な魔力を持つ者が多く、その為、多くの犯罪者を生むことになっている。

その悪循環を断とうと動いてはいるがなかなか上手くいっていないのが現状だ。

俺の指摘を受け、先程までの余裕ぶった態度が嘘のように取り乱すフレスベルグ。


「もういい!お前達は殺す!!」


そう言うとフレスベルグは懐からあるものを取り出した。

俺はそれを見た瞬間、金縛りにあったように体が動かなくなった。

それは茶色の腕輪だった。


「なにぼさっとしてるの!」

「っ!?おい!それはよせっ!?」


ガルムの声で我に返った俺は咄嗟に制止を叫ぶが、フレスベルグは躊躇なく腕輪をはめた。

その瞬間、フレスベルグから感じる魔力が三倍以上膨れ上がった。


「くっ」

「きゃぁ!?」


凄まじい突風が部屋全体を襲う。

俺とガルムは吹き飛ばされないように踏ん張るのがやっとだった。


「フハハハハ!スゴイ力だ!あのオトコの手を借りるのは癪だが、コレハイイ!!!」


おそらく自らの中から溢れてくる力に歓喜しているのだろう。


「っ!?なによあれ!?」

「【ラタトスク】だ」

「知ってるの!?」

「……あぁ。簡単に言えば魔力増幅装置だ。それも違法酒なんか鼻で笑えるレベルのな」

「な――!?そんなのを負担なしでなんて」

「もちろん負担はあるさ。それであれがその結果さ」

「え?」


そう言ってフレスベルグの様子が変化していく。


「グゥ……!??モ、モウイイ!!モウジュウブンダ!!!?ク、クルシイ!?」


段々と苦しみだすフレスベルグ。


「ねぇ……どうしたのよ?あいつ」

「力が強すぎて暴走してんだよ」

「なっ!?なら早く止めないと」

「もう手遅れだ」


俺の言葉が切っ掛けとなったのか、一際強烈な突風が吹き荒いだ。


「あれがラタトスクを使った奴の成れの果てだ」

「っ……」


俺とガルムの視線の先に、フレスベルグはもう存在しなかった。

頭の左右から一対の翼を生やした歪な姿。

目からは血の涙を流すそれは根源的な恐怖を感じる。


「―――――――!!!」


その口からはすでに言葉は失われており耳を塞ぎたくなるような奇声を叫ぶのみだった。

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